2020年09月09日
サマリー
◆国際統合報告フレームワークは、統合報告書の作成に係る「基礎概念」と作成時のポイントである「指導原則」、統合報告書に含むべき「内容要素」によって主に構成されている。「基礎概念」では価値創造のプロセスに係る「価値」と「資本」の定義を行っており、「指導原則」では統合報告書の作成・開示に係る七つの基礎を示している。「内容要素」では統合報告書に必要な八つの要素を整理している。
◆総じて、国際統合報告フレームワークでは、企業にとっての外部環境を踏まえたリスク・機会の認識、それに対応するための戦略・資源配分、その結果としての実績と今後の見通しまでつながる、経営者の目線からの、将来を見据えた時間軸での価値創造に至るプロセスの開示が求められているといえる。
◆IIRC(International Integrated Reporting Council:国際統合報告評議会)は2020年5月に国際統合報告フレームワークの改訂案を公表した。改訂案では主に、ガバナンス責任者の統合報告書における責任表明の簡略化と、作成・表示プロセスの開示の推奨、アウトプットとアウトカムの違いの明確化、正と負のアウトカムの開示のバランスといった項目について修正・追記が行われている。また、改訂案には含まれていないが、長期的な検討事項として、統合報告書の主な利用者の範囲拡大、統合報告書の保証について提案が行われている。
◆IIRCを参照して統合報告書を作成するわが国の企業は、統合報告書の作成・表示までのプロセスをあらかじめ整理しておくとともに、アウトプットにとどまらず、アウトカムがどの資産に影響を与えるのかという価値創造のプロセスを再検討することが求められる。さらに、自社に都合の良い正のアウトカムに偏らず、負のアウトカムにも言及した上で、その対策や今後の目標などについても記載することが期待される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2022年以降の制度改正予定(企業会計編)
2022年02月09日
-
投資信託の時価算定の取扱いが明らかに
「時価の算定に関する会計基準の適用指針」の改正
2021年09月15日
-
2021年以降の制度改正予定(企業会計編)
2021年02月10日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日