今、監査法人に何が求められているのか

『大和総研調査季報』 2016年7月夏季号(Vol.23)掲載

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2016年09月01日

  • 引頭 麻実

サマリー

様々な不正会計事案を教訓に、日本の監査基準は多面的にブラッシュアップされてきた。しかしながら、2015年5月に発覚した東芝の不正会計事案を発端に、これまでの監査基準改訂というアプローチのみで監査の高い品質を実現することは難しいのでは、との見方が生じている。東芝の事案における不正会計の手口は複雑なものではなく、むしろ古くから知られているものであった。このようにみると、監査の現場で監査基準がどのように運用されているのか、といった監査法人のガバナンスという切り口がむしろ重要ではないか。加えて、それを監査法人にのみ任せるのではなく、その取り組みについて上場企業および資本市場関係者が評価できるような仕組みが必要ではないか。


監査は資本市場にとってインフラの一部である。しかし、監査の結論としての監査報告書は開示されているものの、その途中の監査プロセスはブラックボックスとなっており、資本市場関係者としては監査の品質を判断できるような材料は現在のところ持ち合わせていない。しかし、監査の品質について、資本市場としても無関心ではいられない。金融庁では昨年、「会計監査の在り方に関する懇談会」を設置し、この3月に提言がまとめられ、監査の品質を高めるための様々な新しいアプローチが提示されている。今後、具体的なアクションに移行するとみられるが、監査法人のみならず、資本市場全体として、監査の品質を高めるための仕組みを作ることが喫緊の課題となっている。


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