サマリー
様々な不正会計事案を教訓に、日本の監査基準は多面的にブラッシュアップされてきた。しかしながら、2015年5月に発覚した東芝の不正会計事案を発端に、これまでの監査基準改訂というアプローチのみで監査の高い品質を実現することは難しいのでは、との見方が生じている。東芝の事案における不正会計の手口は複雑なものではなく、むしろ古くから知られているものであった。このようにみると、監査の現場で監査基準がどのように運用されているのか、といった監査法人のガバナンスという切り口がむしろ重要ではないか。加えて、それを監査法人にのみ任せるのではなく、その取り組みについて上場企業および資本市場関係者が評価できるような仕組みが必要ではないか。
監査は資本市場にとってインフラの一部である。しかし、監査の結論としての監査報告書は開示されているものの、その途中の監査プロセスはブラックボックスとなっており、資本市場関係者としては監査の品質を判断できるような材料は現在のところ持ち合わせていない。しかし、監査の品質について、資本市場としても無関心ではいられない。金融庁では昨年、「会計監査の在り方に関する懇談会」を設置し、この3月に提言がまとめられ、監査の品質を高めるための様々な新しいアプローチが提示されている。今後、具体的なアクションに移行するとみられるが、監査法人のみならず、資本市場全体として、監査の品質を高めるための仕組みを作ることが喫緊の課題となっている。
大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
のれんに関してASBJが意見聴取を実施する
のれんの非償却の導入・償却費計上区分の変更が提案された
2025年08月06日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
2022年以降の制度改正予定(企業会計編)
2022年02月09日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日