サマリー
◆米国の企業は利益を追求するために、1990年代から労働コストの安い外国、特に中国においてアウトソーシングを拡大してきた。IT・コミュニケーション技術の進歩と貿易の自由化も並行し、アウトソーシングが拡大した結果、米国での製造業の雇用が大幅に減少した。
◆近年に入り、海外にシフトした生産拠点を米国に戻すインソーシングの気運が高まってきた。インソーシング増加の背景には、海外の労働コストの上昇、米国におけるエネルギーコストの低下などのコスト面の要素と、海外で生産するリスクや米国の労働生産性の向上などの非コスト面の要因が挙げられるが、米国政府による政策的後押しが大きい。
◆米国政府は、2011年に雇用を米国に戻すために米国内における投資拡大を目的とした初の連邦政府プログラムとなる「Select USA」に着手した。また、2012年には官民パートナーシップの全国製造イノベーションネットワーク(Nationwide Network for Manufacturing Innovation:NNMI)の研究所を設立し、10年間にNNMIの研究所を45ヵ所設立することを目標としている。米国は、高付加価値の製品と先進技術に対する投資・生産を行い、国際的に競争できる製造業を米国経済が必要としていることを認識し始めたと言えよう。
◆インソーシングによる仕事の大半は、設備投資と先進技術の導入による高付加価値の生産であり、米国の製造業における大幅な雇用の増加にはつながりにくい。しかしながら、長期的には先進サービスの先駆者である米国へとインソーシングが拡大され、資本集約型の生産経済へと更に進行することが予測される。製造業が米国に回帰することにより、米国経済の活性化とイノベーションの推進につながることが大いに期待される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米国経済見通し IEEPA関税は無効化
景気・インフレへの悪影響は緩和も、財政は悪化し不確実性は増す
2026年02月25日
-
米GDP 前期比年率+1.4%と減速
2025年10-12月期米GDP:政府閉鎖の影響、個人消費も減速
2026年02月24日
-
米国:「雇用抑制型の経済成長」は持続可能か
労働生産性改善の広がりと過剰投資の抑制がカギに
2026年02月17日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
理系進路選択に対する男女差の要因分析
女性の理系人材を増やすには、より早期段階での介入や対応が必要
2026年02月06日
-
2026年の東証改革の方針
上場会社の質の向上と新陳代謝を促進する市場機能の強化
2026年02月02日
-
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日
-
第228回日本経済予測
第2次高市政権の重点政策、どう進めるか①外国人労働者受け入れ、②消費減税/成長・危機管理投資、を検証
2026年02月20日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
理系進路選択に対する男女差の要因分析
女性の理系人材を増やすには、より早期段階での介入や対応が必要
2026年02月06日
2026年の東証改革の方針
上場会社の質の向上と新陳代謝を促進する市場機能の強化
2026年02月02日
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日
第228回日本経済予測
第2次高市政権の重点政策、どう進めるか①外国人労働者受け入れ、②消費減税/成長・危機管理投資、を検証
2026年02月20日

