雇用の量的改善は鈍化傾向か

2013年8月の米雇用統計: 金融政策に慎重な判断を求める内容

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2013年09月09日

  • 笠原 滝平

サマリー

◆2013年8月の非農業雇用者数は7月から増加幅が拡大した。しかし、過去2ヵ月分のデータが大幅に下方修正されたため、前月差の6ヵ月平均は16万人程度と、雇用の改善ペースが鈍化した可能性がある。


◆業種別に見ると、これまで雇用者数の増加を牽引してきた民間サービス部門で増加ペースの鈍化が見られた。また、販売が好調な自動車関連を除く製造業では引き続き雇用の吸収力が弱いと判断できよう。


◆失業率は7.3%と7月から低下したが、その要因は前向きに評価できるものではない。就職を諦めた者の増加が失業率低下の主因であり、就業者数も5ヵ月ぶりに減少した。会社都合の失業者数の増加など、ネガティブな内容が散見された。時間当たり賃金の増加など前向きに評価できる側面もあるが、雇用環境は強弱入り混じる内容であった。


◆金融政策を考える上では、8月の雇用統計は慎重な判断を求める内容であったとみられる。9月FOMCでの資産買い入れ規模縮小開始がコンセンサスになりつつあったが、8月の結果はその時期を後押しするものではないだろう。大和総研では引き続き12月FOMCでの縮小開始決定を見込むが、仮に9月FOMCで決定された場合でも、その縮小規模は小さなものにとどまるだろう。

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