日本経済見通し:2021年8月

経済見通しを改訂/ワクチン接種・変異株による感染シミュレーション

RSS

2021年08月20日

  • 経済調査部 シニアエコノミスト 神田 慶司
  • 鈴木 雄大郎
  • 経済調査部 エコノミスト 小林 若葉
  • 経済調査部 エコノミスト 岸川 和馬

サマリー

◆2021年4-6月期のGDP1次速報の公表を受け、経済見通しを改訂した。実質GDP見通しは2021年度が+3.4%、2022年度が+3.3%である。当社のメインシナリオでは、全国民の約8割が新型コロナウイルスワクチンの2回接種を10月末に終えると想定している。経済正常化が21年秋から進むことで景気の回復ペースが加速していく見込みだ。

◆日本経済にとっての景気下振れ要因は感染拡大のほか、半導体不足による供給制約により、自動車や一部の家電製品の購入や輸出が伸び悩む状況が長引くことが考えられる。資源高による企業収益や家計所得への悪影響も懸念される。仮に2021年8月以降の交易条件が7月から横ばいで推移すると、2021年度に日本から海外へ流出する所得は22兆円に上ると試算される。所得の減少は設備投資や個人消費の抑制につながる恐れがある。

◆景気の先行き不透明感は強く、ワクチン接種率と変異株の動向に大きく左右される。仮にワクチンの効果が半減する変異株が流行した場合、2022年初めに5回目の緊急事態宣言の発出を余儀なくされ、経済損失は3.7兆円程度と1回目の宣言時を上回るとみられる。先進国を中心に進んできた経済正常化は大幅に後退し、変異株に対応するワクチンの開発・普及が進むまでは経済活動が停滞する恐れがある。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。