サマリー
◆2018年の世界経済の減速は「2017年ボーナス(①米国を中心とした在庫循環の好転、②共産党大会を控えた中国経済の加速、③財政緊縮から拡張への移行に伴う欧州経済の回復)」の剥落によるものであり、このことは過去の日本経済見通しでも指摘してきた通りだ。これに加え、2018年の世界経済のもう一つの特徴である「米国一強」の背景として、①減税効果、②米国財政・金融政策の結果としての世界的なファイナンスコストの上昇、③米中冷戦下での「取り分」調整、の三つの要因が挙げられる。
◆これらを踏まえた上で今後を展望すると、世界経済の減速は続く可能性が高い。まず、循環的には世界経済は在庫調整局面を迎えている。また、国債需給の悪化を受けた米国債金利の高止まりは続きそうだ。加えて、2019年以降は欧州でも同様の現象が発生する可能性が高い。米中間の関税引き上げに伴う悪影響は(現時点で公表されている規模から拡大しない限りにおいて)、足下の原油価格の下落が続くとすれば、その大部分が相殺される可能性が高い。しかし循環的な在庫調整の継続、および米欧を中心とするファイナンスコストの上昇を主因として、世界経済は緩やかな減速を続けるだろう。
◆世界経済と同様に日本経済も、「2017年ボーナス」が剥落する格好で、踊り場に位置している。まず在庫循環は「積み増し」局面から「意図せざる在庫増」局面に突入しつつあり、いずれ「在庫調整」局面を迎える可能性が高い。また、輸出は世界経済の減速を反映する形で、ピークアウトの兆しを強く示している。日本経済は当面、潜在成長率を若干下回る低空飛行を続ける公算が大きい。
◆日本経済の成長に対する外需寄与の低下に伴い、内需が相対的に重要性を増してくるが、先行きの内需には好悪両方の材料が存在している。好材料は、原油価格の下落だ。他方、成長率の下押し要因となるのが2019年10月に予定されている消費増税だ。これらの効果は今後の原油価格および財政政策による対応によって変動するが、現時点では上述の低空飛行シナリオを変更するほどの変動を見込んではいない。当社では前年度比で2018年度+1.0%、2019年度+0.8%の成長率をベースラインシナリオとしている。
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