日本経済見通し:2018年8月
Ⅰ. 日本経済は踊り場局面、見通しに変更なし(18年度+1.0%、19年度+0.8%)Ⅱ.再推計:米中通商戦争の激化で世界経済はどうなる?Ⅲ.検証:なぜ賃金・所得が改善しても消費が回復しないのか?
2018年08月17日
サマリー
◆2018年4-6月期GDP一次速報の発表を受けて経済見通しを改訂した。しかし改訂後も実質GDP予想は前回から変更なく、2018年度が前年度比+1.0%、2019年度が同+0.8%だ。日本経済は、2017年度に揃っていた好材料が剥落する格好で、踊り場局面に位置しているとの判断に変更はない。先行きの日本経済は、当面は減速を続けながら、あくまでも極めて緩やかな成長軌道を辿るとみている。中期的視野に立つと、日米中を中心として資本ストックの循環が成熟化していることに加え、2019年10月に予定されている消費増税に伴う負の所得効果が見込まれる中、日本経済は2019年度にかけて減速を続ける見通しだ。日本経済の成長率は2017年度に一旦ピークアウトした可能性が高い。
◆先行きの日本経済のリスクとして、米中を中心とした通商戦争の問題が浮上している。大和総研のマクロモデルを用いた試算によれば、米中間で実施ないしは検討されている追加関税措置が実体経済に与える影響は中国▲0.25%、米国▲0.29%である。世界経済に与える影響はIMFの試算を援用すると▲0.10%となり、壊滅的ではないものの、無視できる規模でもなくなってきた。なお、日本にとっての正念場は「自動車追加関税」を巡る通商交渉であるとの見方に変化はない。20%の関税賦課が決定した場合、日本車・部品の関税コストを1.7兆円以上増加させることになる。
◆賃金が増加している割には消費の伸びが弱い。この現象の背景としては、三つの要因-①統計が示すほどには所得が改善していない可能性が高いこと、②賃金上昇が特定の(消費性向の低い)クラスターに偏っている結果として全体の消費性向が低下していること(ミックス効果)、および③個人の直面する賃金カーブのフラット化が続いていることを受けて貯蓄の合理性が増していることが指摘される。そしてこうした環境が近い将来に劇的に変化する可能性は低く、消費の回復・拡大は鈍い状況が続きそうである。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
第225回日本経済予測
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年05月22日
-
主要国経済Outlook 2025年5月号(No.462)
経済見通し:世界、日本、米国、欧州、中国
2025年04月24日
-
「相互関税」騒動と日本の選択
2025年04月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日