サマリー
◆経済見通しを改訂:2012年1-3月期GDP一次速報を受け、2012-13年度の成長率見通しを改訂した。改訂後の実質GDP予想は2012年度が前年度比+2.3%(前回:同+1.9%)、2013年度が同+1.3%(同:同+1.4%)である。今後の日本経済は、メインシナリオとして、(1)東日本大震災発生に伴う「復興需要」、(2)米国・中国を中心とする海外経済の持ち直し、(3)日銀の追加金融緩和が見込まれること、という「三本の矢」に支えられて、緩やかな景気拡大が続く見通しである(→詳細は、熊谷亮丸他「第173回日本経済予測(2012年5月22日付)」参照)。
◆日本経済の中長期的リスク:「経常収支赤字化」:今回のレポートでは、日本経済が抱える様々なリスク要因を多面的に検証した。日本経済が抱える中長期的なリスク要因は「経常収支赤字化」である。当社は、わが国の中長期的な経常収支の動向に関する定量的なシミュレーションを行った。基本シナリオでは、2020年時点でわが国の経常収支は24兆円程度の黒字を維持する見通しである。リスクシナリオとして、円高、原油高、世界経済の悪化などが複合的に発生するケースでも、よほど劇的な変化が起きない限り、わが国の経常収支は容易には赤字化しない公算である。ただし、製造業の海外流出が加速し「悪い空洞化」が進行する場合には、将来的な経常収支赤字化の可能性が高まるものと考えられる。わが国の政策当局は、将来的な日本経済を取り巻く環境の激変を念頭に置き、経済の「供給サイド」の政策と、財政再建を中核に据えた適切な政策対応を講じる必要がある。
◆日本経済の短期的リスク:ギリシャのユーロ離脱など:2012-13年度にかけて日本経済が抱えるリスク要因としては、(1)ギリシャのユーロ離脱などを受け「欧州ソブリン危機」が深刻化、(2)地政学的リスクなどを背景とする原油価格の高騰、(3)円高の進行、(4)原発停止に伴う生産の低迷、の4点に留意が必要である。今回のレポートでは紙幅の関係もあり、特に重要性が高い上記(1)についてのみ、詳細な分析を行うこととしたい。欧州諸国の国債のヘアカット率に関する3つのシナリオを設定した上で、日本経済に与える影響を算定したところ、最悪のケースでは、わが国の実質GDPは4%以上押し下げられるリスクがある。今後、ギリシャのユーロ離脱などをきっかけに「欧州ソブリン危機」が深刻化した場合、日本経済が「リーマン・ショック」並みの打撃を受ける可能性を否定し得ない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
主要国経済Outlook 2025年10月号(No.467)
経済見通し:世界、日本、米国、欧州、中国
2025年09月25日
-
トランプ政権には懐柔か、対抗か
2025年09月25日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
最新のレポート・コラム
-
働く低所得者の負担を軽減する「社会保険料還付付き税額控除」の提案
追加財政負担なしで課税最低限(年収の壁)178万円達成も可能
2025年10月10日
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
「インパクトを考慮した投資」は「インパクト投資」か?
両者は別物だが、共にインパクトを生むことに変わりはない
2025年10月09日
-
一部の地域は企業関連で改善の兆し~物価高・海外動向・新政権の政策を注視
2025年10月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2025年10月08日
-
政治不安が続くアジア新興国、脆弱な中間層に配慮した政策を
2025年10月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日