サマリー
男女の所得格差は、労働力という希少な資源の非効率な配分(低い全要素生産性)を示唆するだけでなく、女性の労働参加の意欲低減、家計所得の減少など、日本経済全体に悪影響を及ぼす点にも問題がある。またその格差が広がるきっかけは出産・育児である可能性が高い。そこで、出産・育児により所得格差が生まれるというChildPenalty(CP)の視点から、第一子の出産が女性の就業率、賃金、労働時間に与える影響を、個人レベルのパネルデータとイベント・スタディという定量的手法を用いて分析した。その結果、就業率で約30%、賃金で約50%、労働時間で約50%の低下・減少が見られた。日本ではCPが長期的に持続し、男女の所得格差の大きな要因となっている。
CP縮小の手段としては家族政策(FFP)が典型的だが、海外の先行研究ではFFPのみでは効果が限定的であることが指摘されている。FFP拡充に加え、働き方改革、労働市場の構造改革、男性の意識・行動改革などの多面的なアプローチが必要だと考えられる。日本で男女の所得格差を是正するには、子育てにかかる金銭的・時間的なコストを社会全体のものと認識し、母親のみならず、男性や企業なども子育てコストを担うという覚悟が必要だ。
大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
国内旅行消費、押し上げの鍵は「分散化」
国・自治体・企業の連携で旅行の時期を分散し費用減と混雑の緩和を
2025年07月11日
-
経済指標の要点(6/18~7/11発表統計分)
2025年07月11日
-
有効求人倍率の低迷は実態を表しているのか?
業務統計であるが故のデータの振れや集計対象の偏りに注意
2025年07月09日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日