男女の所得格差の論点

~ Child Penalty の推計~『大和総研調査季報』2025年新春号(Vol.57)掲載

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2025年01月24日

サマリー

男女の所得格差は、労働力という希少な資源の非効率な配分(低い全要素生産性)を示唆するだけでなく、女性の労働参加の意欲低減、家計所得の減少など、日本経済全体に悪影響を及ぼす点にも問題がある。またその格差が広がるきっかけは出産・育児である可能性が高い。そこで、出産・育児により所得格差が生まれるというChildPenalty(CP)の視点から、第一子の出産が女性の就業率、賃金、労働時間に与える影響を、個人レベルのパネルデータとイベント・スタディという定量的手法を用いて分析した。その結果、就業率で約30%、賃金で約50%、労働時間で約50%の低下・減少が見られた。日本ではCPが長期的に持続し、男女の所得格差の大きな要因となっている。

CP縮小の手段としては家族政策(FFP)が典型的だが、海外の先行研究ではFFPのみでは効果が限定的であることが指摘されている。FFP拡充に加え、働き方改革、労働市場の構造改革、男性の意識・行動改革などの多面的なアプローチが必要だと考えられる。日本で男女の所得格差を是正するには、子育てにかかる金銭的・時間的なコストを社会全体のものと認識し、母親のみならず、男性や企業なども子育てコストを担うという覚悟が必要だ。

大和総研調査季報 2025年新春号Vol.57

大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。

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