90年代と比較したコロナ禍での過剰債務問題

金融危機に発展するリスクは小さいものの国民負担となる可能性

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2022年01月07日

  • 永井 寛之

サマリー

◆新型コロナウイルス感染拡大後に企業の過剰債務は非製造業を中心に急増した。2021年7-9月期で71兆円に達したと推計される。もっとも、1990年代から2000年代前半に経験したように、過剰債務が大規模なバランスシート調整や経済活動の停滞をもたらす可能性は低いだろう。今回は公的金融機関が主な貸出主体であるからだ。

◆だが、財政赤字という形で国民負担となる可能性がある。経済の新陳代謝が低下することも考えられる。資金繰り支援策をいつどのように終了させるかといった出口戦略の議論を感染拡大がある程度落ち着いた段階では開始する必要があろう。また、政府は事業再構築補助金を通じてビジネスモデルの転換などを支援しているが、こうした政策の有効性を検証しつつ借り入れ企業の生産性向上を引き続き促進するとともに、将来的には債務の減免の在り方などについても検討すべきである。

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