R&D投資の短期的見通しと中長期的な課題

R&D投資は短期的には小幅な減少の見込み。投資の効率性改善が課題

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2021年01月29日

  • 永井 寛之

サマリー

◆持続的な経済成長の実現にはR&D投資を通じた生産性の向上が不可欠である。国内企業を対象にパネルデータ分析を行ったところ、R&D投資は日本の生産性向上にプラスの効果をもたらしてきたことが示唆される。

◆コロナ禍による景気悪化は遅行的にR&D投資を減少させることが予想される。先行研究によれば、景気後退期には企業を取り巻く金融環境がR&D投資に影響を与える。この点、政府と日本銀行は大規模な資金繰り支援策を実施しているため、R&D投資の大幅な減少は避けられるとみられる。

◆日本のR&D投資の構造的な課題は、投資の効率性が国際的にみて低いことである。背景の一つには、オープンイノベーションが十分でないことがある。日本企業のオープンイノベーションの障壁としては、経営層がその意義や目的を理解していないこと、専用の部署が設置されていないこと、人員や予算が十分に確保されていないことが指摘されている。このような課題を解決し、オープンイノベーションの成功事例を増加させれば、日本社会全体でその意義が広く認識され、多くの企業で導入が進むだろう。

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