サマリー
◆19年10月末時点の日本在住の外国人労働者は165.8万人と5年前の2.1倍となり、労働力としての重要性がますます高まっている。しかし、新型コロナウイルス感染拡大防止のための出入国制限により、日本国内で就労可能な在留資格を持つ外国人は20年4月以降減少している。本稿では、国の労働政策に関わる資格の中で最多を占める「技能実習」に焦点を当て、日本における外国人労働者の重要性について考察する。
◆技能実習生が多く従事する産業の労働需要を見ると、コロナ禍による経済活動の縮小の影響がほとんどない農林漁業の有効求人倍率のみ堅調に推移している。農業就業者数は減少の一途をたどる中、外国人労働者が増加しており、技能実習生の減少が労働力不足を引き起こしたと考えられる。コロナ禍以前のような出入国が可能になるにはまだ相当の時間が掛かると考えられ、農業の労働需要が高まる秋に労働力不足の深刻化が懸念される。
◆政府は、コロナ禍発生後に急激に起こった農業の労働力不足解消のための施策を講じている。中長期的な労働力不足解消の対策としては、「技能実習」とは異なる在留資格で、いわゆる単純労働に従事する外国人労働者を受け入れていくことなども有効であろう。
◆新型コロナウイルス感染症が世界中で拡大し、人の移動が制限されたことで、外国人労働者への過度の依存は国の経済活動にとってリスクとなり得ることが浮き彫りとなった。しかし、外国人労働者は今後も日本にとって必要不可欠な労働力である。政府は、このリスクを踏まえ、外国人労働者の受け入れ方針や方法を見直すことが必要と考える。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
「責任ある積極財政」下で進む長期金利上昇・円安の背景と財政・金融政策への示唆
「低水準の政策金利見通し」「供給制約下での財政拡張」が円安促進
2025年12月11日
-
2025年12月日銀短観予想
輸出不振や原材料高で製造業の業況判断DI(最近)は悪化を見込む
2025年12月10日
-
2025年7-9月期GDP(2次速報)
設備投資などが減少し、実質GDPは前期比年率▲2.3%に下方修正
2025年12月08日
最新のレポート・コラム
-
中国:来年も消費拡大を最優先だが前途多難
さらに強化した積極的な財政政策・適度に緩和的な金融政策を継続
2025年12月12日
-
「責任ある積極財政」下で進む長期金利上昇・円安の背景と財政・金融政策への示唆
「低水準の政策金利見通し」「供給制約下での財政拡張」が円安促進
2025年12月11日
-
FOMC 3会合連続で0.25%の利下げを決定
2026年は合計0.25%ptの利下げ予想も、不確定要素は多い
2025年12月11日
-
大和のクリプトナビ No.5 2025年10月以降のビットコイン急落の背景
ピークから最大35%下落。相場を支えた主体の買い鈍化等が背景か
2025年12月10日
-
12月金融政策決定会合の注目点
2025年12月12日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

