出入国制限により農業は人手不足に直面

中長期的な解決策として外国人労働者受け入れ緩和も選択肢の一つ

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2020年09月16日

  • 矢澤 朋子

サマリー

◆19年10月末時点の日本在住の外国人労働者は165.8万人と5年前の2.1倍となり、労働力としての重要性がますます高まっている。しかし、新型コロナウイルス感染拡大防止のための出入国制限により、日本国内で就労可能な在留資格を持つ外国人は20年4月以降減少している。本稿では、国の労働政策に関わる資格の中で最多を占める「技能実習」に焦点を当て、日本における外国人労働者の重要性について考察する。

◆技能実習生が多く従事する産業の労働需要を見ると、コロナ禍による経済活動の縮小の影響がほとんどない農林漁業の有効求人倍率のみ堅調に推移している。農業就業者数は減少の一途をたどる中、外国人労働者が増加しており、技能実習生の減少が労働力不足を引き起こしたと考えられる。コロナ禍以前のような出入国が可能になるにはまだ相当の時間が掛かると考えられ、農業の労働需要が高まる秋に労働力不足の深刻化が懸念される。

◆政府は、コロナ禍発生後に急激に起こった農業の労働力不足解消のための施策を講じている。中長期的な労働力不足解消の対策としては、「技能実習」とは異なる在留資格で、いわゆる単純労働に従事する外国人労働者を受け入れていくことなども有効であろう。

◆新型コロナウイルス感染症が世界中で拡大し、人の移動が制限されたことで、外国人労働者への過度の依存は国の経済活動にとってリスクとなり得ることが浮き彫りとなった。しかし、外国人労働者は今後も日本にとって必要不可欠な労働力である。政府は、このリスクを踏まえ、外国人労働者の受け入れ方針や方法を見直すことが必要と考える。

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