経済理論からみる新型コロナ対策の有効性

金融緩和と企業の資金繰り支援策、所得補償が需要減の抑制に効果的

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2020年08月12日

  • 経済調査部 エコノミスト 小林 若葉

サマリー

◆各国政府による感染拡大防止策は戦後最悪の景気悪化をもたらすなど経済活動を厳しく抑制した。経済理論的には、都市封鎖等によりサービス業などが休業した場合、将来のサービス消費を十分に行うために現在の非サービス消費を抑制する可能性がある。総需要への悪影響は、家計が借入に制約がある場合にはさらに大きくなる。

◆経済理論的に有効な政策は、金融緩和に加え、企業の資金繰り対策や、休業を余儀なくされたセクターの労働者や失業者への所得補償である。日米欧などの政府や中央銀行が異例の規模で実施した財政・金融政策は概ねこれに即したものであり、雇用環境が悪化した中でも、国民生活の維持に寄与した。

◆感染拡大が長期化する中、新型コロナ対策として実施された経済支援策は効果が薄れつつある。また、ソーシャルディスタンスの確保のために生産性が低下するなど、感染症対策による供給制約がさらなる需要ショックを誘発する可能性には注意が必要だ。

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