ICT製品需要の増加がGDPを下押しする?

競争力低下で輸入増も、事業活動の効率化は長期的には経済にプラス

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2019年12月16日

  • 経済調査部 エコノミスト 小林 若葉

サマリー

◆内需の拡大によるGDPの増加が輸入の増加によって相殺される効果が近年強まり、生産を誘発する効果が弱まっている。本稿では、輸入が増加した品目を整理した上で、輸入が増加した背景として考えられる、①日系企業の生産移転(逆輸入の増加)、②人手不足による供給制約、③国際競争力の低下、の3つの仮説について検討する。

◆近年輸入が増加したのは情報・通信技術(ICT)製品が中心である。最終財の輸入浸透度(総供給に占める輸入の割合)の上昇は、日系企業の生産移転に加えて、ICT製品の国際競争力の低下によって輸入が増加したことによるところが大きいとみられる。同製品における米国・中国企業の世界シェアは圧倒的に高く、日本企業のシェアはほとんどの製品で一桁台にとどまる。

◆海外製品への需要が増加し、輸入浸透度が上昇するということは、内需が増加しても輸入の増加に相殺される形でGDPが増加しにくくなることを意味する。ICT製品への需要の増加はこうした流れを加速させるとみられる。しかし、長期的には経済にプラスの効果をもたらすことを見逃すべきではない。国内製か海外製にかかわらず、企業がより安価で高品質な設備等を利用することは、提供する商品やサービスの質を高め、コストを引き下げることにつながる。消費者にとっても、安くて高品質な商品やサービスを手に入れる機会が増えることになる。企業の事業活動が効率化し、収益力が高まる側面を踏まえると、輸入浸透度の上昇はそれほど悲観するべきことではないだろう。

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