2019年9月日銀短観

業況判断の悪化続く。売上・利益・設備投資計画は3年ぶりの低水準

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2019年10月01日

  • 小林 俊介

サマリー

◆9月短観では、前回調査(2019年6月)時点と比較して業況判断DI(最近)は大企業製造業・非製造業ともに悪化したものの市場コンセンサス対比では上振れして着地した。製造業の業況判断が悪化した主因は中国需要の弱さと原油価格の上昇だが、米中交渉の再開に伴い摩擦の緩和期待が強まったことなどを受け悪化は小幅なものにとどまった。非製造業では連休効果の剥落と原油価格の上昇が業況判断を押し下げた。一方、キャッシュレス対応に伴う特需や、住宅などの一部分野で確認された駆け込み需要が業況判断を押し上げ、こちらも全体としては小幅な悪化にとどまった。

◆業況判断DI(先行き)でも、両業種において悪化が見込まれている。大企業製造業では中国需要に大きく依存する業種での悪化が著しい。業況判断は辛うじてプラス圏にとどまったが、米中交渉の結果次第ではマイナスに転じる可能性が残る。また想定為替レートは足下の実勢よりもやや円安水準に設定されており、事業計画を一定程度割り引いてみる必要がありそうだ。大企業非製造業では特需や駆け込み需要で潤った業種を中心に反動が警戒されている。また、消費増税による負の所得効果を念頭に関連業種で広範に先行き懸念が増しているようだ。

◆2019年度の全規模全産業の売上高計画と経常利益計画は下方修正され、9月時点での前年度比水準としては、チャイナショック等を端緒として世界経済が大きく減速した2016年度以来の低成長にとどまっている。同様に「設備投資計画(含む土地、ソフトウェアと研究開発投資額は含まない)」の拡大速度も、前年度比+2.4%と3年ぶりの低水準に下方修正された。業績の拡大が止まり、設備稼働率も頭打ちの状態が続く中、設備投資への意欲は必ずしも強くない。また、米中交渉や消費増税の影響に関して不確実性が強まる中、企業の慎重姿勢が強まっている可能性が指摘される。

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