サマリー
◆3月短観では、①中国向けを中心とした輸出の大幅な減少と、②原油価格の再上昇を背景として、前回調査(2018年12月)時点から大幅に業況感が悪化した。業況判断DI(最近)は大企業製造業が17年末、大企業非製造業は18年央をピークとして緩やかな低下が続いてきたが、今回の短観ではそれぞれ12%pt(前回差▲7%pt)、21%pt(同▲3%pt)となり、いずれも市場コンセンサスを下回った。
◆先行きに関しても幅広い業種で悪化が見込まれているが、これは上記の二要因を反映したものとは言い難い。むしろ本質的には日本経済全体の足踏みが続く中、需給・在庫・価格判断に示される需給バランスの悪化が続いており、一段の生産調整が発生する可能性が高い点が先行きの懸念材料として残っている可能性が高い。
◆大企業全産業の2018年度の売上高計画は前年度比+2.6%となり、2年連続の増収が見込まれている。しかし前回調査時点からは▲0.7%pt下方修正された。また、今回から2019年度の計画が公表されているが、同+0.9%と、2017年度、2018年度の年初計画よりは慎重だ。大企業全産業の2018年度の経常利益計画(水準)は、前年度の大幅増益の反動もあり、前年度比▲1.4%となる計画だ。前回調査からも▲0.5%pt下方修正されている。2019年度の計画も同▲1.3%となった。
◆2018年度の全規模全産業の「設備投資計画(含む土地、ソフトウェアと研究開発投資額は含まない)」は、前年度比+10.4%となり、比較可能な2004年度以降で、2005年度計画(同+10.5%)に次ぐ高水準となっている。ただし2019年度の計画は、底堅いながらも若干の減速を見込んでいる。人手不足と施設の老朽化という長期構造的な要因と、売上・生産の鈍化という短期循環的な要因が、現在は拮抗している。
◆同様に、労働市場のひっ迫が一時的に停止していることも興味深い。全規模の雇用人員判断DI(最近)は、依然として大幅なマイナス圏での推移となっており、企業の人手不足感は強い。しかし前回調査時点から製造業は+2%pt(需給の緩和)、非製造業は横ばいとなっており、足元では需給のひっ迫は進んでいない。こちらも、生産年齢人口の減少という長期構造的な要因と、売上・生産の鈍化という短期循環的な要因が、現在は拮抗している状況にあるとみられる。
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