サマリー
◆2018年7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率▲1.2%(前期比▲0.3%)と2四半期ぶりのマイナス成長に転換し、市場コンセンサス(前期比年率▲1.0%、前期比▲0.3%)からも下振れした。マイナス転換の背景として酷暑、豪雨、台風、地震といった自然災害要因が挙げられるが、一過性の要因を除いても基調は弱い。2017年10-12月期以降、実質GDPの水準は横ばい圏での推移が続いている。日本経済は踊り場局面にあるという当社従来の判断に変化はない。
◆需要項目別に確認すると、内外需ともにマイナス寄与となっている。民間最終消費支出は前期比▲0.1%と、2四半期ぶりに減少した。名目雇用者報酬の伸びに減速がみられること、生活費を中心とした物価が上昇していたことに加え、自然災害が重石となった。好調な伸びを続けてきた民間企業設備も同▲0.2%と8四半期ぶりに減少した。その主因は4-6月期の伸び率が同+3.1%と非常に強かったことの反動と、災害に伴う供給制約に求められよう。輸出は同▲1.8%と5四半期ぶりに減少した。2018年初から増勢が弱まっていたところに自然災害の影響が重なった。一部メーカーの供給制約や関西国際空港の閉鎖が輸出全体を下押ししたことに加えて、サービス輸出に該当する訪日外客の消費が落ち込んだことも押し下げに寄与したもようだ。
◆日本経済は、在庫循環および外需の寄与が剥落する中、低空飛行を続ける公算が大きい。在庫循環は「積み増し」局面から「意図せざる在庫増」局面に突入しつつある。いずれ「在庫調整」局面を迎える可能性が高い。輸出は昨年度まで①米国を中心とした在庫循環上の回復、②共産党大会を控えた中国経済の加速、③財政緊縮から拡張への移行に伴う欧州経済の回復により加速してきたが、これらの効果は剥落している。減税効果が顕在化している米国経済は好調だが、いずれその効果も消える。そして今後は米中冷戦の効果も発現する。加えて国内に目を向けても、2019年10月には消費増税が控えている。日本経済の成長率は引き続き、潜在成長率を下回るペースにとどまるだろう。
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