サマリー
◆大和総研のマクロモデルを用いた試算によれば、米中間で実施ないしは検討されている追加関税措置が実体経済に与える影響は中国▲0.14%、米国▲0.15%、日本▲0.01%と限定的である。
◆他方でIMF等の国際機関では「世界貿易コストが10%上昇すれば世界経済▲2%低下」との試算が出されているが、両者の乖離は前提条件の差異によるものだ。米中関税措置に伴う世界貿易コスト上昇率は0.26%にとどまるため、IMF試算を援用すると世界GDPへの影響は▲0.05%となる。鉄鋼・アルミニウムへの追加関税措置、および報復関税を全て含めても世界GDPへの影響は▲0.07%である。
◆結局、リスクの本丸は米中貿易戦争ではない。むしろその後に待ち受けている「自動車追加関税」の成否が死活的に重要だ。20%の関税賦課が決定した場合、世界GDPを▲0.1%低下させるとともに、日本車・部品の関税コストを1.7兆円以上増加させることになる。今後控えている自動車の通商交渉が日本にとっての最大の正念場となろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年10月貿易統計
トランプ関税の悪影響が継続。今後は米中リスクにも警戒が必要
2025年11月21日
-
2025年10月全国消費者物価
サービス価格や耐久消費財価格の上昇が物価上昇率を押し上げ
2025年11月21日
-
中国の渡航自粛要請は日本の実質GDPを0.1~0.4%下押し
今後は対中輸出などへの波及に要注意
2025年11月21日

