サマリー
◆本稿では、規制改革推進会議行政手続部会が「行政手続コスト削減に向けて(見直し結果と今後の方針)」にて初めて公表した国・地方の行政手続コストのデータに基づいて、行政手続コストの削減が日本のGDPに与える影響を試算した。
◆もし国・地方で節約された労働時間を平均的な付加価値を生む業務へ振り向けることができれば、これまでの成長パスと比較して、GDPは毎年1.3兆円増加するとの結果となった。これは、2017年12月に内閣官房TPP等政府対策本部が公表した日EU・EPAの経済効果の約4分の1の大きさであるが、さらに地方自治体も巻き込んだ削減対象の大幅な拡大や、削減で生まれる余剰労働をより生産性の高い分野へ振り向けることができれば、日EU・EPAに迫る経済効果を生み出す可能性を秘めている。
◆行政手続が簡素化されれば、外資参入やベンチャー企業の設立も盛んとなり、中長期的な経済効果はさらに大きくなるものと思われる。複雑で時間の掛かる行政手続がマクロ経済に与えるマイナスの効果は多くの研究でも示されている。一方で、新たな行政手続を設ける場合には、カナダや英国などで実施されているように、手続の数が増えていかないような歯止めを掛けておくことも重要だ。一見地道に見えるビジネス環境の改善がもたらすプラスの効果についてもっと注目されてもよいだろう。
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