サマリー
◆12月日銀短観では、これまで弱含んでいた企業の業況感に改善の動きが出始めた点が注目される一方で、設備投資計画にはやや弱さが見られる結果となった。先行きの業況感に対して企業は慎重姿勢を維持しているものの、足下の経済・金融環境の改善を踏まえると、過度な懸念は不要だと考えている。
◆12月日銀短観の回答期間は2016年11月8日の米大統領選挙後であり、共和党のトランプ氏が勝利した後の大幅な円安の影響などが調査結果に部分的に出ているとみられる。具体的には、一部の輸出関連製造業の業況判断DIに対して、トランプ相場が一定程度プラスに作用した可能性がある。ただし、通常の場合、企業は「月単位」で年度の事業計画を変更することはないため、想定為替レートや、収益計画および設備投資計画の結果に対しては、ほとんど影響していないと考える。
◆大企業製造業の「業況判断DI(最近)」は+10%ptと前回(+6%pt)から改善し、市場コンセンサス(+10%pt)通りの結果となった。大企業非製造業の「業況判断DI(最近)」は+18%ptと前回調査(+18%pt)から横ばいとなり、市場コンセンサス(+19%pt)を下回った。
◆大企業全産業の2016年度の売上高計画は前年度比▲3.2%、経常利益計画は前年度比▲11.6%となった。これまでの輸出の停滞や個人消費の弱さなどを受けて、売上高と経常利益計画のいずれも下方修正された。
◆全規模全産業の2016年度の「設備投資計画(含む土地、除くソフトウェア)」は、前年度比+1.8%と前回(同+1.7%)から小幅に上方修正された。12月日銀短観の設備投資計画には、中小企業を中心に上方修正されるという「統計上のクセ」があるが、今回は例年のパターンよりやや弱いと言える。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年3月雇用統計
失業率は上昇するも、求人倍率が上昇するなど雇用環境は悪くない
2025年05月02日
-
消費データブック(2025/5/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年05月02日
-
2025年1-3月期GDP(1次速報)予測 ~前期比年率+0.5%を予想
外需が下押しも内需は堅調/小幅ながら4四半期連続のプラス成長
2025年04月30日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日