サマリー
◆2016年度の最低賃金の引き上げ幅は全国加重平均で25円と決定され、最低賃金の水準は823円と初めて800円台に乗ることとなった。安倍首相は、最低賃金を将来的に1,000円まで引き上げる方針を示している。最低賃金引き上げの動きは、決して日本に限ったものではなく、世界各国でも同様に観察される。最低賃金引き上げを巡る議論では、低所得者層の賃金底上げを通じて格差を縮小させるという視点も重要である。
◆最低賃金を3%程度引き上げることにより、短時間労働者(女性)の時給を1.7%程度底上げする効果が期待される。労働者の属性によっては、最低賃金の引き上げが年収の増加に必ずしもつながらない点に留意したい。「年収アップ」に立ちはだかる2つの山と壁を取り除くことが今後の課題だと考える。
◆伝統的な経済学に基づくと、完全競争的な労働市場では、政府が最低賃金を引き上げると雇用は減ると想定される。他方、アベノミクスの下で最低賃金が大幅に引き上げられる一方、雇用の改善が続いているという日本の現状は、最低賃金の引き上げが雇用に悪影響を及ぼすという教科書的な内容とかなり様相が異なっている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年4-6月期GDP(2次速報)
実質GDP成長率は前期比年率+2.2%に高まるも民間在庫などが主因
2025年09月08日
-
一億自己啓発社会の死角
データが示す、転職志向・子育て・ジェンダーにおける格差
2025年09月05日
-
2025年7月消費統計
需要側統計は強いが供給側は弱く、総じて見れば前月から概ね横ばい
2025年09月05日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日