サマリー
◆2016年8月2日、「未来への投資を実現する経済対策」が閣議決定された。一時的な景気浮揚効果を狙った対策という性格に加えて、中長期的な構造問題の解決を意図した項目が多く含まれていることが特徴と言えよう。
◆本対策のうち、2016年度補正予算によって財政措置が組まれるものは4.5兆円程度となるもようだ。公共事業の契約率、進捗率などを考慮すると、今回の対策は2016年度のGDPを0.2%押し上げることとなるだろう。
◆ただし、今回の対策では、2016年度中に予算措置が行われない項目にこそ注目が必要だ。社会負担の増加により、可処分所得が伸び悩む中、雇用保険料を引き下げることは一定程度家計の可処分所得を下支えするだろう。また、女性の雇用環境の改善も、長い目で見れば世帯年収の増加を通じて、可処分所得改善に資すると考えている。
◆景気の基調が弱含む中で、短期的な景気浮揚効果の大きい公共事業に頼るだけでなく、あえて構造的な問題に対する政策を多く打ち出したことは評価出来る。一方、対策として打ち出された政策が将来の予算編成に影響を及ぼし続けることには疑問が残る。
◆政府には、適切な検討、議論を踏まえて、必要な政策に必要な予算を付けるという「ワイズスペンディング」を基本理念として、「バラマキ政策」と揶揄されることのないような経済政策の策定や財政運営が求められていると言えよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
-
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
-
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
-
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
-
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日