サマリー
◆1月29日、日本銀行が“マイナス金利付き量的・質的金融緩和”の導入を決定した。世界を見渡せば、マイナス金利を導入したのは日銀が初めてではない。マイナス金利政策はユーロ圏やスウェーデン、デンマーク、スイスが導入済みであり、日本は遅れてその仲間入りを果たした。マイナス金利は、日本経済にどのような影響をもたらすのか。日本に先駆けてマイナス金利を導入した欧州各国においてみられた、実体経済、金融市場への影響について検証する。
◆第一章では、日本に先行してマイナス金利を導入した欧州各国でみられた経済的な影響について検証した。欧州で導入されたマイナス金利は、実体経済に直接的な好影響を与えたとは明言し難いものの、金融市場には一定のインパクトを与え、株高による資産効果や通貨安による輸出増などを通じて、間接的に実体経済を押し上げたとみられる。しかし、日本においてはマイナス金利導入後、折悪しく、世界経済の先行き不透明感が強まったため、株高や通貨安が実現しておらず、現時点では、欧州で見られた、金融市場を通じた経済に対する間接的な押し上げ効果は期待しづらくなっている。
◆第二章では、マイナス金利が日本経済に与える影響について定量的に分析した。試算によると、金利の低下は金融機関や企業、家計といった民間部門に恩恵をもたらすこととなる。金融機関にとって、貸出金利の低下がマイナス要因となるものの、国債売却益の増加などの影響がマイナスを大きく上回る見通しだ。また、企業や家計にとっては貸出金利や住宅ローン金利の低下が好影響を与えると予想される。マイナス金利の導入による好影響を受け、企業の設備投資意欲や家計の消費マインドが改善され、経済の好循環が起動することが期待される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年5月全国消費者物価
米価格の上昇が他の食料品や外食など関連品目の価格にも波及
2025年06月20日
-
2025年5月貿易統計
輸出数量は横ばい圏を維持も、円高効果等で輸出額は8カ月ぶりに減少
2025年06月18日
-
2025年4月機械受注
民需(船電除く)は減少し、コンセンサス通りの結果だった
2025年06月18日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日