サマリー
◆日銀短観(2015年9月調査)では、大企業製造業の業況感が悪化するとともに、企業が先行きに対して一段と慎重になっていることが明らかになった。この背景としては、中国をはじめとする世界経済の減速懸念、輸出と生産の停滞や個人消費の足踏みに加え、円高・株安の動きなどが考えられる。
◆大企業製造業の「業況判断DI(最近)」は+12%ptと前回(+15%pt)から悪化し、市場コンセンサス(+13%pt)も下回った。製造業の業況感の悪化は3四半期ぶりである。中国経済の減速や資源安などを背景に輸出関連の加工業種の悪化が目立つ。
◆大企業非製造業の「業況判断DI(最近)」は+25%ptと前回調査(+23%pt)から改善し、悪化を見込んでいた市場コンセンサス(+20%pt)を大きく上回った。非製造業の業況感の改善は4四半期連続である。日本人の消費に足踏みが見られる一方で、訪日外国人のインバウンド消費の好調さなどがプラスに寄与したと考えられる。
◆大企業全産業の2015年度の売上高計画は前年度比+0.4%、経常利益計画は前年度比+4.7%となり、消費税増税後の落ち込みからの反動増などを反映して小幅な増収が見込まれ、値上げや資源安によるマージンの改善を受けて経常増益が見込まれる。
◆全規模全産業の2015年度の「設備投資計画(含む土地、除くソフトウェア)」は、前年度比+6.4%と前回(同+3.4%)から上方修正された。9月短観では、中小企業を中心に設備投資計画が上方修正されるという「統計上のクセ」があるが、今回は非製造業を中心に通常の修正パターンより強い結果だと評価する。
◆市場では、昨日発表された鉱工業生産と、今回の日銀短観を受けて、補正予算による経済対策や追加金融緩和政策に対する期待が生じている。当社のメインシナリオでは、年明け以降の追加金融緩和を想定しているが、市場に「サプライズ」を与えるべく、10月に金融緩和が実施される可能性も否定し得ない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
「責任ある積極財政」下で進む長期金利上昇・円安の背景と財政・金融政策への示唆
「低水準の政策金利見通し」「供給制約下での財政拡張」が円安促進
2025年12月11日
-
2025年12月日銀短観予想
輸出不振や原材料高で製造業の業況判断DI(最近)は悪化を見込む
2025年12月10日
-
2025年7-9月期GDP(2次速報)
設備投資などが減少し、実質GDPは前期比年率▲2.3%に下方修正
2025年12月08日
最新のレポート・コラム
-
中国:来年も消費拡大を最優先だが前途多難
さらに強化した積極的な財政政策・適度に緩和的な金融政策を継続
2025年12月12日
-
「責任ある積極財政」下で進む長期金利上昇・円安の背景と財政・金融政策への示唆
「低水準の政策金利見通し」「供給制約下での財政拡張」が円安促進
2025年12月11日
-
FOMC 3会合連続で0.25%の利下げを決定
2026年は合計0.25%ptの利下げ予想も、不確定要素は多い
2025年12月11日
-
大和のクリプトナビ No.5 2025年10月以降のビットコイン急落の背景
ピークから最大35%下落。相場を支えた主体の買い鈍化等が背景か
2025年12月10日
-
12月金融政策決定会合の注目点
2025年12月12日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

