9月日銀短観

大企業製造業の業況感が悪化し、先行きの景気下振れリスクが高まる

RSS

2015年10月01日

  • 金融調査部 主任研究員 長内 智
  • 小林 俊介

サマリー

◆日銀短観(2015年9月調査)では、大企業製造業の業況感が悪化するとともに、企業が先行きに対して一段と慎重になっていることが明らかになった。この背景としては、中国をはじめとする世界経済の減速懸念、輸出と生産の停滞や個人消費の足踏みに加え、円高・株安の動きなどが考えられる。


◆大企業製造業の「業況判断DI(最近)」は+12%ptと前回(+15%pt)から悪化し、市場コンセンサス(+13%pt)も下回った。製造業の業況感の悪化は3四半期ぶりである。中国経済の減速や資源安などを背景に輸出関連の加工業種の悪化が目立つ。


◆大企業非製造業の「業況判断DI(最近)」は+25%ptと前回調査(+23%pt)から改善し、悪化を見込んでいた市場コンセンサス(+20%pt)を大きく上回った。非製造業の業況感の改善は4四半期連続である。日本人の消費に足踏みが見られる一方で、訪日外国人のインバウンド消費の好調さなどがプラスに寄与したと考えられる。


◆大企業全産業の2015年度の売上高計画は前年度比+0.4%、経常利益計画は前年度比+4.7%となり、消費税増税後の落ち込みからの反動増などを反映して小幅な増収が見込まれ、値上げや資源安によるマージンの改善を受けて経常増益が見込まれる。


◆全規模全産業の2015年度の「設備投資計画(含む土地、除くソフトウェア)」は、前年度比+6.4%と前回(同+3.4%)から上方修正された。9月短観では、中小企業を中心に設備投資計画が上方修正されるという「統計上のクセ」があるが、今回は非製造業を中心に通常の修正パターンより強い結果だと評価する。


◆市場では、昨日発表された鉱工業生産と、今回の日銀短観を受けて、補正予算による経済対策や追加金融緩和政策に対する期待が生じている。当社のメインシナリオでは、年明け以降の追加金融緩和を想定しているが、市場に「サプライズ」を与えるべく、10月に金融緩和が実施される可能性も否定し得ない。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。