サマリー
円相場の大幅な減価にもかかわらず、日本の輸出は伸び悩んでいる。もちろん円高が是正されていなければ輸出はもっと低迷していただろう。輸出が伸び悩む理由の一つは、世界経済が力強さを欠く貿易環境にある。新興国は全般に成長率を鈍化させ、欧州では牽引役のドイツが地政学的リスクの影響もあり失速気味となっている。もう一つの理由は、日本企業の海外現地生産の拡大にあり、これはアジア諸国の関税制度とも関係している。日本の基幹産業である自動車の輸出台数は、リーマン・ショック前のピーク比で約40%減少している。自動車の現地生産と販売台数は、すでにアジアが米国を大きく上回っているが、インド100%、タイ80%、中国の25%など、アジアの主要国は完成車輸入に高関税を課している。そのためアジア自動車市場の成長に対して、輸出ではなく現地生産の拡大で対応するのが合理的な選択となる。さらに自動車部品も輸出に代わり現地調達が大幅に増えている。これは円安が輸出の拡大を促す景気回復のルートの一つが、過去のように機能しなくなったことを意味している。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日