サマリー
◆2月の企業関連の指標は、改善基調が続く中で、大雪の影響もあり一時的に弱含んだ。鉱工業生産指数(季節調整値)は、前月比▲2.3%と6ヶ月ぶりの低下となった。輸出数量指数(内閣府による季節調整値)は同+2.9%と3ヶ月ぶりの上昇となった。機械受注(船舶・電力を除く民需)(季節調整値)は、同▲8.8%と2ヶ月ぶりに減少した。企業関連の指標の先行きは、海外経済の回復による外需の拡大と、企業収益の改善に伴う設備投資の増加を背景に、改善傾向が続くとみている。
◆2月の家計関連の指標は、改善が継続しているものの、個人消費では大雪の影響で一時的に弱い動きがみられた。実質消費支出は季節調整済み前月比▲1.5%と、2ヶ月ぶりに減少、振れの大きい住居や自動車などを除いた実質消費支出(除く住居等)で見ても、同▲2.4%と4ヶ月ぶりの減少となった。完全失業率(季節調整値)は3.6%となり、前月から0.1%pt改善した。有効求人倍率(季節調整値)は1.05倍と前月から0.01pt上昇した。先行きの家計関連の指標は、企業部門の回復が所得・雇用に波及することで、改善が続くとみている。個人消費に関しては、3月には消費税増税前の駆け込み需要で大きく増加したと考えられる。4月以降駆け込みの反動減が生じているが、7-9月期には個人消費は増税前の水準まで回復するとみている。その後も、賃上げによる所得環境の改善を背景に、増加基調が継続する公算が大きい。
◆4月25日に発表される消費者物価指数では、東京都区部(4月中旬速報値)の数値が注目される。増税によるCPIの上振れ幅は、4月東京CPIでは1.6%pt程度になる見込みであるが、増税幅以上の価格改定が行われていれば、それ以上にCPIも上昇する可能性がある。一方で、価格転嫁をスムーズに行うことができず、小売店が実質値下げを行った場合、CPIの上昇幅は限定的なものに留まる可能性もある。こうした価格転嫁の動向は、日本銀行の物価目標の達成に大きく影響を与えると同時に、小売店の収益力などにも大きく影響するものである。様々な観点から増税後の物価動向には注視が必要であり、4月東京CPIの数値は慎重に判断する必要があるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
メタバースは本当に幻滅期で終わったか?
リアル復権時代も大きい将来性、足元のデータや活用事例で再確認
2025年06月11日
-
2025年1-3月期GDP(2次速報)
実質GDP成長率は前期比年率▲0.2%に改善するも民間在庫が主因
2025年06月09日
-
2025年4月消費統計
総じて見れば前月から概ね横ばい、先行きも横ばい圏で推移しよう
2025年06月06日
最新のレポート・コラム
-
医療等情報の二次利用に向けた環境整備
医療DXの効果を可視化し、一次利用を広げることがカギ
2025年06月12日
-
メタバースは本当に幻滅期で終わったか?
リアル復権時代も大きい将来性、足元のデータや活用事例で再確認
2025年06月11日
-
議決権行使助言業者規制を明確化:英FRC
スチュワードシップ・コード改訂で助言業者向け条項を新設
2025年06月10日
-
上場後の高い成長を見据えたIPOの推進に求められるものとは
グロース市場改革の一環として、東証内のIPO連携会議で経営者向け情報発信を検討
2025年06月10日
-
「内巻」(破滅的競争)に巻き込まれる中国自動車業界
2025年06月11日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日