「異次元緩和」の落とし穴?—期待インフレ率と金利の関係

QE3縮小の動きに伴い、期待インフレ率の上昇は名目金利の上昇要因に

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2013年07月11日

  • 齋藤 勉

サマリー

◆期待インフレ率と金利の関係が注目されている。日本銀行は、名目金利の低下と、期待インフレ率の上昇という、相反する目標を目指しており、両立は不可能であると指摘する声がある。一方で、期待インフレ率の上昇が、実質金利の低下につながることで、実体経済を押し上げるという意見もある。


◆2013年初以降の金利と期待インフレ率の動きを確認すると、期待インフレ率の上昇が実質金利の低下要因になった局面と、期待インフレ率の上昇が名目金利の上昇要因になった局面が存在する。足下の動向からは、期待インフレ率と名目金利、実質金利の間に安定的な関係性は見いだせない。


◆しかし、実質金利の動きに焦点を当ててみると、これまでとは違った側面が見えてくる。過去の主要国の動向や、経済理論からは、主要国で実質金利が均等化するという関係性が見出せる。足下では、日本の実質金利が米国や英国の水準に収斂する様子が見て取れる。


◆実質金利の低下余地が大きければ、期待インフレ率の上昇は実質金利の低下要因となる。一方で、日本の実質金利が主要国の実質金利に連動して外生的に動いている局面では、期待インフレ率の上昇は名目金利の上昇要因となる。


◆今後は、米国のQE3縮小の動きに伴って、主要国の実質金利は上昇に転じる可能性が高い。結論として、日本の期待インフレ率の上昇は自然体で見れば名目金利の上昇要因となるだろう。

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