サマリー
◆期待インフレ率と金利の関係が注目されている。日本銀行は、名目金利の低下と、期待インフレ率の上昇という、相反する目標を目指しており、両立は不可能であると指摘する声がある。一方で、期待インフレ率の上昇が、実質金利の低下につながることで、実体経済を押し上げるという意見もある。
◆2013年初以降の金利と期待インフレ率の動きを確認すると、期待インフレ率の上昇が実質金利の低下要因になった局面と、期待インフレ率の上昇が名目金利の上昇要因になった局面が存在する。足下の動向からは、期待インフレ率と名目金利、実質金利の間に安定的な関係性は見いだせない。
◆しかし、実質金利の動きに焦点を当ててみると、これまでとは違った側面が見えてくる。過去の主要国の動向や、経済理論からは、主要国で実質金利が均等化するという関係性が見出せる。足下では、日本の実質金利が米国や英国の水準に収斂する様子が見て取れる。
◆実質金利の低下余地が大きければ、期待インフレ率の上昇は実質金利の低下要因となる。一方で、日本の実質金利が主要国の実質金利に連動して外生的に動いている局面では、期待インフレ率の上昇は名目金利の上昇要因となる。
◆今後は、米国のQE3縮小の動きに伴って、主要国の実質金利は上昇に転じる可能性が高い。結論として、日本の期待インフレ率の上昇は自然体で見れば名目金利の上昇要因となるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
-
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
-
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
-
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
-
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日