サマリー
◆欧州中央銀行(ECB)の理事らは6月18日より3日間、コロナ危機発生後初めてとなる対面式の会合を開き、今秋に発表予定のECBの戦略見直しの骨子となる課題について協議した。戦略見直しの議論の焦点の一つは、ラガルド総裁が就任以来、熱意を示している気候変動問題への取り組みである。脱炭素化の一環として、気候変動の経済的影響に対する分析を強化し、社債買い入れの対象企業の評価にあたり、気候変動リスクを組み込んでいく方針が検討されている。
◆戦略見直しの議論のもう一つの焦点は、インフレターゲット(目標)の今後である。気候変動に比べ、コンセンサスが弱く、意見の調整が続いている。問題は、インフレ目標をどのように市場に伝えるかという点であり、インフレ目標の超過はどの程度許容されるのかという点である。一般的に、インフレ目標には範囲(2~3%など)で考えるか、点(2%)で考えるかという大きな枠組みの違いがある。ECBは「2%を下回るがこれに近い水準」という範囲とも点とも取れないような曖昧な目標を掲げており、理事の多くもこれを問題視しているのが実情であろう。
◆金融政策のグリーン化が進められる一方で、排出量削減の取り組みは順調とはいえず、国際機関が梃入れを図りつつある。国際エネルギー機関(IEA)はパリ協定の目標である、2050年までにCO2排出量をネットゼロとするための施策に関する報告書を発表した。その中でも特に物議を醸したのは、各国のエネルギー企業に対し、2021年から新たな石油・ガス探索プロジェクトを全て中止すべきと提言したことであろう。IEAは1974年に(OPECに対抗する石油消費国側である)西側諸国のための石油監視団体として設立された経緯から、化石燃料支持の姿勢が強かった。設立経緯を考慮すれば、想定外ともいえるIEAの主張によって、化石燃料業界には最後通牒が突きつけられた感がある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 中東情勢が下振れリスクに
エネルギー価格上昇の影響は既に顕在化、金融政策はタカ派シフト
2026年03月24日
-
欧州経済見通し 財政拡張の効果が拡大
ドイツ製造業受注が急増し、製造業の景況感も改善
2026年02月24日
-
10-12月期ユーロ圏GDP 内需主導で成長加速
主要国が揃ってプラス成長、市場予想から上振れ
2026年02月02日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
米国:AIブームの裏側で高まる金融リスク
ITセクターの収益懸念が揺らすプライベート・クレジット市場
2026年03月13日
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
中東情勢緊迫化が日本経済の下振れリスクに
原油価格100ドル/バレルで26年度の実質GDP成長率は▲0.2%pt
2026年03月02日
-
ガバナンス・コード改訂による取締役会等機能強化
取締役事務局の役割を列挙、保有現預金の検証、「コーポレートセクレタリー」への言及など
2026年03月11日
-
「SaaSの死」は何を意味するのか?
AIエージェントが促すSaaS業界の構造変化、経済社会・雇用への波及
2026年03月03日
米国:AIブームの裏側で高まる金融リスク
ITセクターの収益懸念が揺らすプライベート・クレジット市場
2026年03月13日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
中東情勢緊迫化が日本経済の下振れリスクに
原油価格100ドル/バレルで26年度の実質GDP成長率は▲0.2%pt
2026年03月02日
ガバナンス・コード改訂による取締役会等機能強化
取締役事務局の役割を列挙、保有現預金の検証、「コーポレートセクレタリー」への言及など
2026年03月11日
「SaaSの死」は何を意味するのか?
AIエージェントが促すSaaS業界の構造変化、経済社会・雇用への波及
2026年03月03日

