サマリー
◆政局混乱が続いていたイタリアでは2021年2⽉13日、大統領官邸で宣誓式が行われ元欧州中央銀行(ECB)総裁のマリオ・ドラギ氏が首相に就任した。イタリアが(コロナ危機からの復興を目的とした)EU復興基金から得る助成金や融資は、加盟国間で最大の規模であり、ドラギ首相の最初の仕事はEU復興基金の使途を決めることである。欧州債務危機の際にユーロを救った立役者として知られる元中銀総裁には、国内はもとより欧州委員会およびEU加盟国政府からも大きな期待が寄せられている。ただしEU復興基金を活用するためには、経済再活性化に向け庶民の不評を買うような改革をも押し進めなければならない。
◆EU加盟国は、経済再活性化に向けEU復興基金からの分配を受けるため、欧州委員会に対し、詳細な基金利用計画案の提出が求められている。EUは2050年までにカーボンニュートラル達成を目標としており、欧州理事会も2030年までに排出量を1990年比で55%削減の提案を支持している。このため、加盟国も復興・回復計画案策定にあたり、改革や投資が気候変動への対応目標を優先すべきとされている。またこの目標を達成するため、同計画案に含まれる支出の少なくとも37%がグリーン投資に割り当てられることが求められている。
◆イタリアは今回の政情不安により、復興計画策定において、スペインをはじめ多くの加盟国に後れを取る恐れがある。コンテ前政権が公開した計画草案には、最終案に必要とされる、改革に関する詳細や改革達成に関するステップが示されていない。欧州委員会は投資提案のみならず、政治的に難しい分野における改革についての行程表や節目なども計画案に含め、提示することを期待している。イタリアが効果的な使途を示さなければ、EU復興基金に対し懐疑的な見方の強い北欧州諸国が、イタリアを基金供与の失敗例として受け止める危険性がある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日