サマリー
リーマン・ショックは米国発の金融危機だが、欧州では単一市場の構築が進められ、単一通貨ユーロが導入された一方で、この新しい体制に対応したセーフティネットが欠けており、危機が増幅された。金融システム不安、財政懸念、そして景気後退とデフレ懸念が連続したのである。
危機の連鎖を防ぐために様々な対応策が講じられ、中でもECBが大きな役割を果たした。金融機関のみならず、財政懸念で資金調達が困難となったユーロ圏加盟国に対しても「最後の貸し手」となることを宣言し、またデフレ懸念対策としては前例のない金融緩和に踏み切った。ただし、低金利局面の長期化による銀行や保険会社の収益低下という弊害のほか、金利が上昇に転じた際の調整がより大きくなることへの懸念も高まりつつある。
ECBはデフレ懸念の後退を理由に、2018 年から緩和政策の軌道修正に動いている。ただし、リスクプレミアムが急上昇して資産価格の調整が起きた場合に、新しいセーフティネットが果たして有効かは、これから試されることである。また、欧州の一部の国で対策が遅れている銀行の不良債権問題が金融システムの脆弱性として、あらためて認識されるリスクも残っている。

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