2024年09月13日
サマリー
◆東京証券取引所(東証)による「資本コストや株価を意識した経営」の要請を契機に、邦銀はRORA(Return on Risk-weighted Assets:リスクアセット利益率)指標を重視した経営へとますます舵を切っている。しかし、邦銀がRORA改善を目指し大規模な融資・有価証券ポートフォリオ(リスクアセット)の再構築を進めているにもかかわらず、投資家が求める水準とは依然として隔たりがある。
◆日本銀行(日銀)の金融政策正常化に伴う金利上昇は、資金利益を重視する伝統的銀行業の復活を促す一方、新たなリスクも顕在化させている。大和総研の分析によれば、金利リスク量の資本賦課インパクトの大きさ(実質的な金利リスク量)とRORAは反比例する傾向にあり、金利リスク量の増加がRORA改善に往々として寄与していないことが明らかとなった。
◆2023年3月の東証要請を受け、2024年3月期の会社説明会では多くの邦銀がロジックツリーを駆使し、ROEやRORA向上への将来像を掲げている。中期経営計画等では右肩上がりのROE向上を描き、最終的に7%以上を目指す銀行が多い。しかし、その大半が画一的な説明に終始し、実現性の高い詳細な計画の開示は不足している。このため、掲げられた目標が実現するかどうかの確度を測ることは難しい。日銀の金融政策正常化を契機に、単に金利収益の上昇を期待するだけでなく、邦銀のRORA向上に向けた実効性のある具体的戦略の提示が必要な段階に入ったと言えるだろう。
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