2024年07月04日
サマリー
◆6月30日、フランス国民議会(下院)選挙の第1回投票が行われ、バルデラ党首率いる極右政党「国民連合」が首位となり、マクロン大統領率いる中道政党「再生」を中心とした与党連合は3位に沈んだ。7月7日の決選投票でも国民連合が勝利して議会での過半数を握れば、バルデラ党首の首相就任はほぼ確実となる。フランスは大統領の所属政党と下院の多数党が一致すれば大統領の権力は強大化するが、ねじれ(コアビタシオン)が生じた場合は下院の力が強くなる。
◆政権獲得が視野に入ったバルデラ党首は、金融市場の懸念緩和を狙い、財政拡張路線の現実的修正なども示唆しているが、具体的な財政計画が不透明なままであり、国民連合に対する金融市場の不信感は依然として根強い。与党連合のルメール財務相は、国民連合が議会選で勝利し公約を実施した場合、英国の「トラスショック」に類似した債務危機に陥る可能性があると警告した。大和総研の試算では、トラス前首相の減税案が実施されていれば英国の財政赤字額は6割以上増加していたと見込まれる。国民連合の公約実現時にフランスで予想される財政赤字拡大幅も、これとほぼ同程度である。
◆国民連合政権の誕生後、EUとの緊張関係が生じてフランス国債金利が急騰した場合、欧州中央銀行(ECB)は高債務国の国債を無限に買い入れるTPI発動を示唆しつつ国民連合政権に政策変更を迫る可能性がある。この状況は2015年の第2次ギリシャ債務危機を彷彿とさせるが、EU中核国であるフランスはギリシャと異なり、ECBやEUによる大幅な政策修正要求は往々にして難航し、第2次ギリシャ危機以上の金融市場の混乱の可能性も否定できない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
株主還元に比率目標を掲げる主要企業が6割を超える
DOEは機械や化学で、累進配当は卸売業や銀行業での採用率が高い
2025年09月11日
-
特別配当・記念配当の動向と株価への影響
毎年1割程度が特別・記念配当を実施、株価押し上げ効果は短期的
2025年09月09日
-
意見分かれるグロース市場の上場維持基準見直し案
2025年9月に制度要綱が公表予定
2025年07月28日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日