2024年03月21日
サマリー
◆2023年11月、ロシア財務省は「2024年の連邦予算及び2025-2026年の計画期間における連邦予算に関する法律」を可決させロシア連邦の新予算案の枠組みを固めた。新予算計画では2024年の防衛費が財政支出の約3割を占め大幅に拡大するなど、なりふり構わない戦時経済体制への移行が鮮明となっていることが注目された。
◆米国は過去10年間、常に防衛費対GDP比が3%を超えており、ウクライナ隣国のポーランドやロシアと広大な国境を接するフィンランドも、2023年に防衛費対GDP比を大幅に引き上げた。他方、ドイツ、フランス、イタリアといったG7の主要国は、2014年以降、防衛費対GDP比が一度も2%を上回っていない。この状況下で特に警戒すべきは、在任時に何度もNATO離脱をほのめかしたトランプ前大統領が今年の米国大統領選挙で再選される可能性である。
◆ドイツのショルツ首相は2024年2月、今後の防衛支出をNATO加盟国の目標である対GDP比2%以上に引き上げると宣言した。しかしそれを可能とする特別基金からの拠出は3年ほどで枯渇すると言われており、その後対GDP比2%の目標を達成するには、一般予算から年間250億から300億ユーロの追加財政支出が必要になるという。防衛費増額という先制措置を取ったドイツにとっても、ウクライナ侵攻が長期化するほど景気回復の歩みは遅れ、財政規律ルールの順守も困難になるとされている。
◆公的債務残高が対GDP比約140%と高水準で推移しているイタリアは、財源確保に苦慮しており、来年度以降も防衛費対GDP比2%の達成は極めて困難な状況にある。トランプ前大統領の再選を機に、防衛費の過度な負担や財政健全化の先送りに対する懸念が再燃すれば、イタリア国債の投機的等級への格下げ観測が金融市場に改めて台頭し、同国債券の利回りも上昇する可能性が高い。
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