「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の開示と株価パフォーマンス

適時開示閲覧サービスを通じた開示企業の相対株価は概ね上昇

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サマリー

◆1月15日、東京証券取引所は「『資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応』に関する開示企業一覧表の公表について」を公表した。1,656社が上場するプライム市場では660社(構成比40%)、1,619社のスタンダード市場では191社(同12%)が、2023年12月末までに開示を行っている。PBRの水準別では1倍を境に差が表れており、開示した企業数の比率は、2市場の合算でPBR1倍未満が30%とPBR1倍以上の21%を上回っている。

◆当該情報の開示企業を市場がどのように評価しているのかを確認するため、「適時開示情報閲覧サービス」の利用企業の株価に注目した。開示企業851社のうち、108社が該当するが、総じて好感されているといえる。開示の翌営業日の相対株価(対TOPIX)は、108社のうちの約7割にあたる75社が上昇している。また、14%相当の企業がTOPIXを10%超アウトパフォームしており、開示から20営業日には25%の企業がこれに該当している。市場からの高い期待が表れている。

◆相対株価が大きく上昇した企業の特徴に、「PBR1倍未満の企業での業績改善や株主還元強化の確度の高まり」がある。通期業績や配当の上方修正、配当性向や総還元性向の数値目標の新設、引き上げや追加等、具体的な数値を伴ってROEの改善や株主還元の強化につながる説明がある企業が多い。

◆今後の充実が期待されるのが「成長戦略」である。これまでの開示での成長戦略では、既に掲げている中期経営計画の目標達成に関する記載が多いものの、資本コストや資本収益性との関連性が見えにくいものが多い。それぞれの戦略が資本コストや資本収益性にどう影響し、両者の差がどう変化すると予想するか等、経営層の考えを開示資料に含めると、投資家とのコミュニケーションが一層円滑になるだろう。

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