コロナ禍における企業の資金調達・収益環境と今後の見通し

非製造業の一部業種等で今後も厳しい資金調達・収益環境が続く

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  • 遠山 卓人

サマリー

◆9月1日に公表された法人企業統計によると、2020年度の資金調達額は138兆9,611億円と、前年度比で約1.6倍に増加した。資金調達額が急増した背景としては、①コロナ禍で収益環境が悪化する中で借入金等を活用した外部資金の調達が行われたこと、②配当額、人件費等の削減による内部資金の確保が行われたことがあると考えられる。

◆法人企業景気予測調査の結果を踏まえると、2021年度の資金調達に関しては、民間金融機関、政府系金融機関からの資金調達や内部資金の活用が中心になると考えられる。また、企業収益については前年度比で改善することが見込まれるものの、業種間で回復ペースに差が見られることが予想される。

◆東京大学の仲田泰祐准教授らの研究チームによると、シナリオによっては2021年度の後半に新型コロナウイルスの新規感染者数が再び増加すると予測されている。度重なる営業規制により財務体質の悪化に歯止めがかからない状況で感染再拡大の予測が現実のものとなった場合、宿泊業、飲食サービス業等の業種、および中小企業における資金調達環境、収益環境は厳しさを増すものと思われる。政府によるワクチン普及のための施策、資金繰り支援策がどのように展開され、企業の資金調達環境、収益環境がどのように変わるかに注目したい。

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