失われた20年~資本市場停滞の要因 [5]

金融機関行動が引き起こした影響~適切なリスク・リターン関係の喪失

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サマリー

◆バブル崩壊後、日本経済は成長が滞り、「失われた20年」と評されることも多い。その中でも、資本市場の停滞は目を覆うばかりである。資本市場の活性化の必要性については、幾度となく問題意識が提起されたにもかかわらず、いまだ抜本的な解決策は見つけ出せていない。

◆今回、大和総研金融調査部では、資本市場における「失われた20年」を振り返り、停滞要因の整理を試みた。本質的な問題点を洗い出し、今後、実効性のある活性化策を議論する際の土台とすることが目的である。

◆第3章2節では、直接金融を担う資本市場と対極にある、間接金融のメイン・プレーヤーである銀行など金融機関の行動について、検討を行う。

◆邦銀の企業向け貸出には「擬似エクイティ」の性格を有するものがあり、必ずしも信用リスクに見合わない低金利の提示も行われてきた。その結果、適切なリスク・リターンが考慮されない市場が形成され、それが国内株式市場の期待収益率低下の一因にもなっているとも考えられる。低利鞘体質から抜け出せない邦銀は、市場リスクを取って国債投資を行うモデルに転じている。今後の課題は、邦銀のポートフォリオを軌道修正して、適切なリスク・リターン特性を内包した国内資本市場が形成される必要があるだろう。

◆邦銀が不良債権処理に追われていた過去20年の間でも、専業証券会社が企業金融分野で飛躍的にシェアを拡大することはなかったともいえる。今後、不良債権処理から脱した邦銀が力を強めていくのであれば、直接金融が日本の金融市場において拡大する余地は限定されるかもしれない。バブル崩壊以降、資本市場活性化の施策を政府は模索し続けてきたが、大きな効果があったかは疑問が残る。従来型の資本市場の活性化を求めるよりも、現代版の資本市場として再構築する発想を持つべきかもしれない。

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