エネルギー基本計画

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2014年05月26日

  • マネジメントコンサルティング部 主任コンサルタント 平田 裕子

「エネルギー政策基本法」(2002年)第12条では、政府は、エネルギーの需給に関する施策の長期的、総合的かつ計画的な推進を図るため、「エネルギー基本計画」を定めることが義務付けられている。また、少なくとも3年ごとにこれを見直し、必要に応じて変更することが求められている。同法のもと、2003年に最初の「エネルギー基本計画」が策定され、2007年に第2次計画、2010年に第3次計画が策定されてきた。この度、2014年4月、第4次計画となる新たな「エネルギー基本計画」が発表された。


今回の「エネルギー基本計画」は、東日本大震災以降初めての策定であったことから、第1章には、海外に依存する日本のエネルギー供給体制の脆弱さ、原子力発電の安全性に対する国民の懸念、電力コスト上昇による日本経済への影響、温室効果ガス排出量の増大など、我が国が直面している課題が率直に述べられている。第2章では、エネルギー政策の基本方針である「3E+S」(※1)の再確認が行われ、電力・ガスシステム改革等を通じて“多層化、多様化した柔軟なエネルギー需給構造”の構築を目指すことが示されている。また、第3次計画では、原子力発電を「基幹エネルギー」として利用拡大する方針を示していたのに対し、本計画では、「原発依存度については、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化などにより、可能な限り低減させる」として縮小路線を示した。再生可能エネルギーの利用については、「これまでのエネルギー基本計画を踏まえて示した水準(原注1)(※2)を更に上回る水準の導入」を目指すとし、さらなる拡大路線を示している。ただ、具体的なエネルギーミックスは、「原子力発電所の再稼働、固定価格買取制度に基づく再生可能エネルギーの導入や国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)などの地球温暖化問題に関する国際的な議論の状況等を見極めて、速やかに示す」として本計画では提示されなかった。


第3章には具体的な施策が示されており、省エネルギー、再生可能エネルギー、高効率火力発電の利用などの取り組みをこれまで以上に強化していく姿勢が示されている。特に、デマンドレスポンスの活用(第2節)、電力・ガスシステム改革の推進(第6節)、コージェネ・蓄電池の推進(第8節)、水素社会に向けたロードマップの策定(第8節)などが新たに追加されており、需要地域や需要家が積極的に関与する新たなエネルギー社会への期待が寄せられている。


第4章では、課題解決のための技術開発の重要性が述べられており、「環境エネルギー技術革新計画(2013年9月総合科学技術会議決定)」等を踏まえつつ、2014年夏までに戦略的なロードマップを策定するとしている。第5章は、「国民各層とのコミュニケーションとエネルギーに関する理解の深化」と題し、エネルギー問題への関心の高まりに応じた情報提供の体制を作ることや、対話型の政策立案・実施プロセスを社会に定着させていくことの必要性などが述べられている。


図表 エネルギー基本計画の構成

(※1)安全性(Safety)を前提とした上で、エネルギーの安定供給(Energy Security)、経済効率性の向上(Economic Efficiency)、環境への適合(Environment)を図ること。

(※2)原注1には、「2009年8月に策定した『長期エネルギー需給見通し(再計算)』(2020年の発電電力量のうちの再生可能エネルギーなどの割合は13.5%(1,414億kWh))及び2010年6月に開催した総合資源エネルギー調査会総合部会・基本計画委員会合同会合資料の『2030年のエネルギー需給の姿』(2030年の発電電力量のうちの再生可能エネルギー等の割合は約2割(2,140億kWh))」とある。


(2014年5月26日掲載)

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