カーシェアリングに確立した定義はないが、「複数の人が自動車を共同で所有・利用する自動車の共同利用システム(※1)」や「1台の自動車を複数の会員が共同で利用する自動車の新しい利用形態(※2)」とされている。従来のレンタカーとの違いとして、カーシェアリングの場合は、一般的に会員登録が必要なこと、利用時間が短いこと、などが挙げられる。
カーシェアリングは、1980年代に欧州を中心に広まったもので、当初は小規模な仲間同士などでの利用であった。例えば、近所に住む者同士で1台の自動車を時間差や曜日別で利用する形態である。その後、コミュニティや企業などによる組織的な運営形態のものが現れた。
日本では2000年代初めに事業化され、以降、車両台数、会員数共に、増加し続けている(図表1)。

カーシェアリング利用には、年間の走行距離減少などCO2排出量を削減させる効果も期待される。公益財団法人 交通エコロジー・モビリティ財団の「カーシェアリングによる環境負荷低減効果の検証報告書」では、自動車保有状況や居住地などの違いにより差は見られるものの、平均するとカーシェアリング利用によって年間の燃料消費量やCO2排出量は減少しているというアンケート結果が示されている(図表2)。日本ではハイブリッド車、海外では電気自動車など、環境負荷の小さい車両を使ったサービスも出てきており、こうした車両を提供するカーシェアリングが普及すれば、一層のCO2排出量の減少に効果があると思われる。

上述の報告書では、個人利用者からの今後の改善要望点として、乗り捨て方式(異なる場所での貸出返却が可能となるワンウェイ型)やカーシェアリング会社間での相互利用制度が上位に挙がっている。借りたい時に空いている車両がなかったり、返却したい時に空きステーションがなかったりする場合に、近隣のステーションを利用できれば利便性が上がるし、サービス提供側としても機会損失を避けることができる。ただし、これを実現するためには高密度にステーションを配置する必要があり、コストや土地利用の課題がある。
最近では貸出・返却の時にスマートフォンやICカードを使い、空きステーションなどの情報もリアルタイムでわかるようにしたサービスもある。一足飛びにステーション数を増加させることは困難だが、ICTを活用して利便性を上げたサービスを提供することも、利用者増につながると考えられる。
また、一人乗り・二人乗りなどの超小型モビリティを使ったカーシェアリングの社会実験も行われており、いわゆる「買い物弱者」対策や観光振興となることが期待されている。
[参考資料]
公益財団法人 交通エコロジー・モビリティ財団 「カーシェアリングによる環境改善効果を確認~主要5事業者の個人・法人加入者へのアンケートにより検証~」
(※1)国土交通省 「まちづくり事例集 ~先進技術システム編~」の「カーシェアリング」より。
(※2)公益財団法人 交通エコロジー・モビリティ財団 「カーシェアリング」より。
(2014年4月1日掲載)
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