過疎地域は、「過疎地域自立促進特別措置法」(以下、過疎法)(※1) が適用される要件に該当する市町村の区域をいう。過疎法は、人口の著しい減少に伴って地域社会における活力が低下し、生産機能及び生活環境の整備等が他の地域に比較して低位にある地域の自立促進を図り、住民福祉の向上、雇用の増大、地域格差の是正及び美しく風格ある国土の形成に寄与することを目的としている。


過疎法の適用要件には「人口要件」と「財政力要件」がある。人口要件は、特定の25~45年間の人口減少率や年齢構成(高齢者比率や若年者比率)の偏りのことで、財政力要件は、特定3ヶ年度の税収に対する財政需要の比率(財政力指数)である。また、両適用要件に該当しても、その市町村に公営競技に係る収入がある場合、売上金が13億円(あるいは20億円)を超える市町村は除かれる(※2)


過疎法の第2条第1項の適用要件に該当する市町村は過疎地域となる(図表1)。この他に、市町村の廃置分合等の特例として、総務省令、農林水産省令、国土交通省令で定める基準に該当する新市町村は過疎地域とみなされる(第33条第1項)。また、過疎地域市町村を含む合併があった場合の特例として、新市町村の区域のうち、旧過疎地域市町村の区域も過疎地域となる(第33条第2項)。


図表1 過疎地域の種類と要件

全国には神奈川県と大阪府以外の45都道府県に775の過疎市町村があり、全市町村数1,719(特別区を除く)に占める割合は45.1%に及ぶ(図表2)。過疎市町村が占める面積は21万6,321km2と広く、国土の総面積37万7,950km2の57.2%を占める。ただし、過疎市町村の人口は約1,033万人で、総人口約1億2,806万人の8.1%に留まる。


図表2 過疎市町村の数、面積、人口

過疎地域が生まれる背景には、農山漁村から都市への大幅な人口移動や少子高齢社会の進展などが挙げられる。過疎対策としては、過疎地域の活力を維持・向上させるために、産業基盤の整備、農林漁業経営の近代化、中小企業の育成、企業誘致、起業促進、観光開発等で産業を振興して安定的な雇用を増大し、財政力を強化する必要がある。また、地域間の交流を促進するための交通路の確保やICTの活用、医療や教育の振興によって高齢者を含めた住民生活の安定と福祉の向上を図ることも求められている(※3)。過疎地域が過疎法に基づく財政措置や行政措置(都道府県代行制度)、税制措置等を活用する場合、過疎地域の市町村及び関係する都道府県は過疎地域自立促進計画を策定する必要がある。




(※1)いわゆる過疎法は、1970年に「過疎地域対策緊急措置法」として時限立法されて以来、1980年に「過疎地域振興特別措置法」、1990年に「過疎地域活性化特別措置法」、2000年に「過疎地域自立促進特別措置法」(2000年3月31日法律第15号)として延長されてきた。2012年には現行法の第二次改正によって、2021年3月31日まで効力が延長された。

(※2)「過疎地域自立促進特別措置法施行令」(2000年3月31日政令第175号)

(※3)“平成23年度版「過疎対策の現況」について”(平成24年10月)、総務省自治行政局過疎対策室


(2014年1月24日掲載)

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