河川に堤防がある場合、堤防の河川側は堤外(外側)、堤防に守られた住宅地などがある側は堤内(内側)と呼ばれており、堤内の水によって引き起こされる氾濫は、内水氾濫と呼ばれている。平坦地に大量の雨が降ると、はけきれない水は、周囲より低い場所に流れ込んで滞留する。降水量が排水設備等の容量を上回る場合には、排水溝やマンホールなどから水が地上に溢れ出し、広い範囲にわたって浸水等を引き起こすこともある。また、本川の水位が上昇することにより、本川の水が支川に逆流し、浸水が広がる場合なども内水氾濫と呼ばれている。浸水等を引き起こす水は、河川などのある外側から来ると思われがちだが、住宅や商業施設などが密集する都市部などを中心に、内水氾濫による水害被害額の割合は決して小さくない(※1)


水害原因別被害額と比率(2010年:億円)

山林や水田などには、雨水を地中に浸透させたり、地表面に一時的に貯留させたりする機能があるのに対し、都市化が進んだ地域では、道路や駐車場などの舗装や建物の屋根などが地表を覆う面積が大きくなっているため、雨水の浸透・貯留能力が低下し、内水氾濫が起きやすくなっていることが指摘されている。また、都市部の拡張に伴って、もともと河道や沼沢地であった土地や降雨時に雨水が滞留しやすい地形の箇所にも、住宅や商業施設等が建設され、浸水等の被害が発生しやすくなっている地域もある。都市部では、地下を利用した交通機関、地下道や地下街、地下駐車場などの地下構造物も多くなっているため、内水氾濫が起きた場合に大きな被害が発生するおそれもある。


内水氾濫を防ぐためには、雨水を一時貯留することや地下への浸透を促すことが有効であるため、大規模雨水貯留施設のほか、ビルや公園、駐車場などの地下を利用した貯留施設の設置、浸透ます・浸透管、透水性舗装等による浸透機能の向上などの取り組みも進められている。しかし、気象庁によれば、20 世紀初頭の30 年間(1901~1930 年)と最近の30 年間(1977~2006 年)を比較すると、一日の降水量100mm以上の日数は約1.2倍、200mm 以上の日数は約1.4 倍になっているという(※2)。気象庁では、1 時間に50mm 以上80mm 未満の雨を「非常に激しい雨」、80mm 以上の雨を「猛烈な雨」と表現しているが、2012年には、「これまでに経験したことのないような大雨」という表現も使われている(※3)。気象庁は、これまでの警報の発表基準をはるかに超える豪雨等が予想され、重大な災害の危険性が著しく高まっている場合には、「特別警報」を発表して最大限の警戒を呼び掛けることとしている(※4)




(※1)「河川関係統計. 水害統計調査」国土交通省

(※2)「異常気象リスクマップ 大雨が増えている」気象庁

(※3)「長官記者会見要旨(平成24年7月19日)」気象庁

(※4)「特別警報が始まります。」気象庁


(2013年8月21日掲載)

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