POPs条約(ストックホルム条約)

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2013年06月07日

  • 伊藤 正晴

POPs(Persistent Organic Pollutants:残留性有機汚染物質)の製造及び使用の廃絶、排出の削減、これら物質を含む廃棄物等の適正処理などを規定している条約。正式名称は“Stockholm Convention on Persistent Organic Pollutants”(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)で、略して「POPs条約」、「ストックホルム条約」などと呼ばれている。


POPsとは、人や生物への毒性があり、環境中で分解されにくく(難分解性)、生物体内に蓄積しやすく(生物蓄積性)、大気や水、移動性の種を介して長距離を移動することで遠く離れた国の環境にも影響を及ぼす恐れがある化学物質のこと。POPsは、偏西風やグラスホッパー現象(※1)などにより国境を越えて移動すると考えられており、過去に使用実績のない高緯度地域に生息するアザラシから検出されるなど、製造国や使用国だけの問題にとどまらない。


このような地球環境全体への国際的な意識の高まりにより、1992年の地球環境サミットで化学物質対策も含めた地球環境問題の解決に向けて「アジェンダ21」がとりまとめられた。これを受けて、1995年に国連環境計画(UNEP)政府間会合が開催され、「陸上に起因する活動からの海洋環境保護に関する世界行動計画(GPA)」とワシントン宣言を採択。特に早急な対応が必要であると考えられる12のPOPsの減少に向けて、これらの物質に対する国際的な枠組みを確立することが求められた。1997年のUNEP第19回管理理事会を契機として5回の政府間交渉委員会が開催され、2001年5月にストックホルムで開催された外交会議においてPOPs条約が採択された。条約の発効は、2004年5月となっている。




[条約の概要]

・PCB(ポリ塩化ビフェニル)など、条約の附属書Aに掲載されている物質は、製造・使用、輸出入を原則禁止。

・DDT(マラリア予防に使用)など、附属書Bに記載されている物質は、特定の目的・用途での製造・使用に制限。

・ダイオキシン類など、附属書Cに記載されている非意図的生成物(※2)は、できる限り廃絶することを目標として削減。

・POPsを含んでいるストックパイル(在庫)や廃棄物の適正な管理と処理。

・上記への対策に関する国内実施計画の策定。

・POPsに関する調査研究、モニタリング、情報提供、教育や、途上国に対する技術・資金援助の実施など。


日本など条約の締約国は、対象となっている物質について、各国がそれぞれ条約を担保できるように国内の法令等で規制することになっている。また、対象となる物質については、POPsの検討委員会(POPRC:Persistent Organic Pollutants Review Committee)において議論されたのち、締約国会議において決定される手続きとなっている。


[参考資料]


POPs条約事務局

環境省「POPs」

経済産業省「POPs条約」

外務省「ストックホルム条約(POPs)」




(※1)熱帯や亜熱帯、温暖な地域で環境中に排出されたPOPsは、揮発等により大気中に拡散し、大気の流れに乗って高緯度の地域へと移動する。そして高緯度地域での寒冷な気候により地表面への降下・堆積が進み、その地域の環境汚染を引き起こすと考えられる。このような大気によるPOPsの拡散は、飛び跳ねて移動するバッタの動きに似ていることからグラスホッパー現象(グラスホッパー効果)と呼ばれている。

(※2)廃棄物の焼却時などに、意図することなく生成されてしまう物質。


(2013年6月7日掲載)

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