人の手によって更新(植栽や播種、挿し木等)された森林を「人工林」という。育成林ともいう。これに対し、自然に任せて更新された森林を「天然林」という。自然更新されていれば、人の手で保育(除伐や間伐等)されたものでも天然林に分類される。
我が国の国土面積3,779万ha(※1)のうち、森林面積は2,510万ha(国土面積の約66%)を占める。戦後から現在まで森林面積はあまり変わらないが、天然林の伐採跡地や無立木地等に造林を進めた結果、人工林の面積は493万ha(1951年)から1,035万ha(2007年)にほぼ倍増した(※2)
人工林の拡大は、国が1950年代、荒れ果てた林地の資源回復や国土保全を目指して拡大造林(天然林の伐採跡地の造林)政策を進めたことなどが背景にある。また、60年代は家庭のエネルギー源が石油や天然ガスに移行したことで薪炭林(主に天然林)の価値が減じたことや、木材需要の増大で立木価格が高騰したため、多くの林家が木材販売収入を造林に投資したことなども要因としてあげられる。この間(1950年度から71年度までの22年間)の造林面積は、拡大造林と再造林(人工林の伐採跡地の人工造林)とを合わせて毎年度30万haを超えていた。70年代に入ると、造林に適した場所が少なくなったことや林業労働力の商工業等への流出などを要因としてブームは去り、造林面積は縮小に向かった。2010年度の造林はわずか2.4万ha(※3)であった(図表1)。
人工林は更新時に目的に応じて樹種が選ばれる。戦後の造林では、当時の旺盛な建材需要を背景に、住宅建築に適したスギやヒノキなどの成長の早い針葉樹が盛んに造林された。最近は広葉樹に更新される割合(※4)も増えてきてはいるが、人工林の総面積に占める針葉樹の割合は約97%に達している。
図表2は林齢別の人工林面積及び人工林蓄積量(森林の立木の幹の体積の総量)の分布状況を示したものである。高度経済成長期の造林ブームを反映して林齢36年~50年に大きく偏っていることがわかる。植林後は下刈りや間伐などの保育が施された後、林齢が50年前後(※5)を超えると伐採されて、建築や土木、紙、建具などとして利用される。今後、多くの人工林が伐採期を迎えることから、森林・林業関係者は、国産材の利用促進と再造林による持続可能な森林形成に取り組んでいる。
(※1)2005年10月1日現在の数値。国土交通省「平成21年版 土地白書」。
(※2)「森林・林業白書(平成22年度)」44頁、林野庁。
(※3)大阪市(2.2万ha)より広く、千葉市(2.7万ha)よりも狭い面積。
(※4)2002年~2006年の造林面積に占める広葉樹の割合は約11%。
(※5)伐採林齢を倍の80~100年生に伸ばし、森林の持つ公益的機能(生物多様性の保全、土砂災害の防止、水源涵養、保健休養の場など)の長期化を目指す長伐期施業という手法もある。
(2013年5月9日掲載)
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
0.50%への利上げが家計・企業に与える影響
家計では「30~40代」の世帯、企業では「中小」で負担が大きい
2025年01月22日
-
CISA が初の国際戦略を発表
DIR SOC Quarterly vol.10 2025 winter 掲載
2025年01月22日
-
「103万円の壁」与党改正案の家計とマクロ経済への影響試算(第4版)
71万人が労働時間を延ばし、個人消費は年0.5兆円拡大の見込み
2025年01月21日
-
欧州サイバーレジリエンス法(EU Cyber Resilience Act)の発効
DIR SOC Quarterly vol.10 2025 winter 掲載
2025年01月21日
-
Scope3排出量の削減目標達成にカーボンクレジットは使えるようになるのか?
2025年01月22日
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
「トランプ関税2.0」による日本経済への影響試算
中間財の出荷減や米国等の景気悪化で日本の実質GDPは最大▲1.4%
2024年12月18日
-
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算(第3版)
様々な物価・賃金指標を用いる案および住民税分離案を検証
2024年12月04日
-
長寿化で増える認知症者の金融資産残高の将来推計
金融犯罪を含む金融面の課題やリスクへの対応も重要
2024年12月20日
-
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
「トランプ関税2.0」による日本経済への影響試算
中間財の出荷減や米国等の景気悪化で日本の実質GDPは最大▲1.4%
2024年12月18日
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算(第3版)
様々な物価・賃金指標を用いる案および住民税分離案を検証
2024年12月04日
長寿化で増える認知症者の金融資産残高の将来推計
金融犯罪を含む金融面の課題やリスクへの対応も重要
2024年12月20日
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日