バイナリー発電は、地熱資源を利用した発電方法の一つである。従来の地熱発電は、200℃以上の高温の熱水や蒸気を使うが、バイナリー発電は、それよりも低温の熱水や蒸気で低沸点の媒体を加熱し、媒体の蒸気でタービンを回すことで発電する。
バイナリー発電は、高温利用の地熱発電と比べると以下のメリットがある。
・適地が多いとみられる
-熱水などの資源が、深く掘削しなくても見つかる可能性があるため
-温泉程度(50℃程度)の中低温水でも発電できるものもあるため
・短い開発期間、低い開発リスク、低コスト
世界の状況を見ると(図表1)、バイナリー発電の設備数は4割以上と多いが、1設備あたりの設備容量が大きくないため、設備容量も発電量も約1割となっている。
現在稼働中の日本の地熱発電所17カ所のうち、バイナリー発電を行っているのは九州・八丁原発電所の1カ所だけである(2012年12月時点)。しかし、2012年以降、新潟県、福島県などの温泉地域でバイナリー発電導入の動きが始まっている。
高温の熱水・蒸気を利用する発電用のタービンでは、日本が世界のシェア7割以上を占めるが、バイナリー発電用のタービンのシェアは、イスラエルが9割以上と圧倒的である(図表2)。
しかし、日本でもバイナリー発電用の設備を開発・販売している企業が出てきており、今後の展開が期待される。
(2013年1月7日掲載)
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
0.50%への利上げが家計・企業に与える影響
家計では「30~40代」の世帯、企業では「中小」で負担が大きい
2025年01月22日
-
CISA が初の国際戦略を発表
DIR SOC Quarterly vol.10 2025 winter 掲載
2025年01月22日
-
「103万円の壁」与党改正案の家計とマクロ経済への影響試算(第4版)
71万人が労働時間を延ばし、個人消費は年0.5兆円拡大の見込み
2025年01月21日
-
欧州サイバーレジリエンス法(EU Cyber Resilience Act)の発効
DIR SOC Quarterly vol.10 2025 winter 掲載
2025年01月21日
-
Scope3排出量の削減目標達成にカーボンクレジットは使えるようになるのか?
2025年01月22日
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
「トランプ関税2.0」による日本経済への影響試算
中間財の出荷減や米国等の景気悪化で日本の実質GDPは最大▲1.4%
2024年12月18日
-
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算(第3版)
様々な物価・賃金指標を用いる案および住民税分離案を検証
2024年12月04日
-
長寿化で増える認知症者の金融資産残高の将来推計
金融犯罪を含む金融面の課題やリスクへの対応も重要
2024年12月20日
-
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
「トランプ関税2.0」による日本経済への影響試算
中間財の出荷減や米国等の景気悪化で日本の実質GDPは最大▲1.4%
2024年12月18日
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算(第3版)
様々な物価・賃金指標を用いる案および住民税分離案を検証
2024年12月04日
長寿化で増える認知症者の金融資産残高の将来推計
金融犯罪を含む金融面の課題やリスクへの対応も重要
2024年12月20日
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日