温室効果ガスインベントリ(以下、「インベントリ」)とは、一国が一年間に、どのような活動分野から、どの温室効果ガスを、どのくらい排出・吸収したか、を示す一覧表のことである。国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の先進国は、毎年、インベントリを提出することが義務付けられている(※1)。
インベントリは関係省庁や団体から提出される各種統計の年報値に基づいて算定され、国際的に定められたガイドラインに準拠して作成される。また、正確性を検証するため、国際的に組織された専門家チームによる審査を受ける必要がある。我が国では、環境省の責任で国立環境研究所が「National Greenhouse Gas Inventory Report of JAPAN」を作成し、外務省がUNFCCCに提出している。日本語版の「日本国温室効果ガスインベントリ報告書」もほぼ同時に公表される(※2)。
UNFCCCに提出されたインベントリは、京都議定書で国ごとに定められた排出削減目標の正式な判定に利用される。国内においては、排出削減対策の策定やモニタリング、排出・吸収源別の削減ポテンシャルの推計、目標とする削減量を実現するための費用および費用対効果の検討などに利用されている。
排出量は様々な要因で変化するが、一般に、経済成長や猛暑・厳冬、化石燃料の使用は排出量を増加させる。我が国の場合、リーマンショック後の景気後退から経済が回復したことと記録的な猛暑および厳冬だったことが影響し、2010年度の総排出量は12億5,800万トン(前年度比4.2%増)となった。森林等による吸収量を意味するLULUCF(※3)(土地利用、土地利用変化及び林業部門)は7,320万トン(同1.8%増)だったので、純排出量は差し引き11億8,480万トン(同4.3%増)となった(図表1)。

(※1)UNFCCCウェブサイト
(※2)国立環境研究所ウェブサイト
(※3)Land Use, Land Use Change and Forestry
(2013年1月7日掲載)
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