2017年12月05日
サマリー
筆者は、1990 年代のバブル崩壊直後から社会的責任投資(SRI)の調査研究と日本でのSRI市場の育成に20 年以上関わってきた。その経験からすると、2014 年の日本版スチュワードシップ・コード(17 年改訂)、15 年のコーポレートガバナンス・コードの策定、およびGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)によるPRI(Principles for Responsible Investment:責任投資原則)署名を契機とした現在のESG投資の急拡大は隔世の観がある。長年欧米の市場動向をフォローしてきた立場からすると、やっと10 年遅れで日本にも広がり始めただけともみえるが、この急速なESG投資の浸透は評価したい。しかし、財務情報とは全く質も性格も違うESG情報を扱うESG投資が急拡大したことに対し、ESG投資は一過性のブームではないか、という疑問の声も聴くようになった。
確かに、時間をかけ精緻化されて第三者監査という信頼性も担保された従来の財務データと比較して、ESGデータの信頼性・正確性のレベルは低い。また、定量化できず、定性情報しかない情報も少なくなく、総じて投資判断に使うデータとしては見劣りする。また定量データがあってもそれをいかに企業価値に結び付けて解釈するのか。そのノウハウも確立されたとはいえない。だから、一過性のブームとして消滅するのか? それは過去30 年ほどの資本市場動向だけを見ていれば、そのように思われるかもしれない。しかし、ESG投資の拡大は、単に資本市場内部の出来事ではない。筆者は100 年単位でグローバルでみた社会およびステークホルダーの変化に呼応した資本市場の動きであると確信している。
なぜそう考えるのか、以下で財務、環境(E)、社会(S)、ステークホルダーと企業の関係(G)の動向から紐解いていく。
大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
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