見えてきた電力小売全面自由化の課題と展望

市場競争の進展には、新電力の供給力調達と需要家行動の促進が必要

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2016年10月21日

  • 大澤 秀一

サマリー

◆電力需要(販売電力量)は今後、安定期に入ると考えられることから、市場競争の重点はより一層、コストあるいは新たな付加価値を伴う商品・サービスに移るであろう。電力小売市場に参入した新電力は357社を数え、電気料金(低圧電灯・電力の電力量単価)は電力会社の規制料金より4%程度、割安ではあるが、シェアは特別高圧・高圧(9.7%)、低圧電灯・電圧(1.2%)と苦戦している。


◆本来であれば、価格を基準として活発な競争が進展することが想定されるが、低圧電灯・電力では今春から自由化が実施されたばかりであることや、卸電力取引所の流動性(取引量)が低いことが新電力の供給力調達の障壁になっていること等から、市場競争が進展していない可能性が指摘できる。今後は、FIT電気や原発再稼働による余力相当の電気が卸電力取引所に供出されることが期待されるため、競争環境の整備は徐々に進むと見込まれる。


◆市場競争の進展には需要家の積極的な行動も重要である。需要家アンケートからは契約を切替た需要家の満足度は高いことから、今後は、制度内容の理解促進や料金メニューの簡素化等によって切替行動を促すことが必要であろう。

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