2016年05月20日
サマリー
◆気候変動対策の国際枠組みとして採択された「パリ協定」の署名が始まった。正式な発効は予断を許さないが、同協定が実施されれば、締約国は国際誓約した温室効果ガス(GHG)の排出削減に係る中期目標の達成に向けた対策を講じる義務が生じる。締約国は開発と調和を図ることを迫られるが、工業国においては、経済を支えるエネルギーミックスの低炭素化等を通して、エネルギー起源二酸化炭素(CO2)等の削減に取り組むことになる。
◆本稿では、締約が見込まれる7つの主要排出国・地域(中国、米国、EU、インド、ロシア、日本、ブラジル)における経済水準と排出水準のこれまでの推移から、現状ではどの国・地域においても、環境(排出削減)と経済の調和が図られていないことを確認する。
◆各国固有の資源エネルギー事情を照らすエネルギーミックスに対して、再生可能エネルギーや原子力といった低炭素エネルギーを切り口にして類型化を行った。中国は「石炭型」、米国とロシアは「天然ガス型」、ブラジルは「再エネ型」、EUは「国際連携型」、インドと日本は「孤立型」に分類された。
◆EUとブラジルは排出水準においては、他国をけん引することにより、地球温暖化対策において重要な役割を果たすことが期待される。一方、国内の化石エネルギーに依存する中国、米国、ロシアにおいては低炭素化率の改善が低水準にとどまることが想定される。日本は独特の立場に置かれており、技術革新を柱とした政策措置の実施を計画している。
◆各国が経済成長とCO2排出増を高い水準でデカップリングさせるのは容易ではないものの、それぞれが固有の資源エネルギー事情に照らした独自の方法で取り組み、世界全体の排出水準を少しでも早く低減させることが望まれる。
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