2013年02月12日
サマリー
東日本大震災以降、安全の追求を最優先に置いた電力の安定供給体制の構築が進められている。太陽光発電等の再生可能エネルギーは安全で環境適合性は高いが、供給が不安定で現時点ではコストが高い。そのため、当面は、安定供給と経済効率性を兼ね備えた火力発電に依存せざるを得ない状況にある。
現在、電気事業者が頭を悩ませているのは、火力発電の電源構成の内訳である。ベース電源だった原子力発電の代替には石炭火力が適しており、コストも安いが環境適合性は低い。LNGやLPGなどのガス火力はミドル電源として優れ、石炭に比べると環境適合性は高いが、コストはやや高めである。石油火力はピーク電源として優れるが、コストが高く、中東依存度が高いため安全保障への懸念もある。
このような状況下、原子力損害賠償支援機構と東京電力が総合特別事業計画の中で示した電源構成の案は、本来、ミドル電源を担うガス火力の供給力を28%から40%に大幅に増やすとともに、コストが低く、地政学的リスクも相対的に小さい石炭火力を11%から15%(石炭等の入札4%も含む)に増強していく計画である(図表1)(※1)。

震災前後における東京電力の供給力の変動を図表2にまとめた。原子力は、福島、東通、大間の各発電所を合わせると1,370万kW程度の供給減となる。また、夜間のベース電源を利用している揚水発電の見直し等に伴い240万kW程度供給が減少する。供給減は合計で1,610万kW程度となる見込みである(図表2)。
一方、ピーク需要抑制方策の徹底で650万kW程度の需要抑制が期待されるが、不足分はガス火力として緊急に設置された設備(千葉・鹿島)の高効率化及び 運転開始から相当年1東京電力ウェブサイト数が経過している設備の継続使用による630万kW程度と、入札で調達する石炭等のベース電源260万kWの合 計1,540万kW程度で賄う計画になっている。供給減との差分(70万kW)は供給予備率(※2)の違い等によるものである。

この計画が公表された当時(2012年5月)は、柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働が前提になっていることが話題になった。そして、石炭等の入札が始まる本年2月に入ると、地球温暖化防止の観点から環境省が経済産業省に対して入札を延期するよう要請したことで、再び電源構成に注目されている。電気事業法の発電所の許認可は経済産業大臣が行うことになっているが、環境影響評価の手続きにおいて、環境大臣に環境保全の見地から意見を聴かなければならないことになっている。今回の要請は、将来的に計画そのものが撤回を迫られる可能性もあり、応札を予定している卸電気事業者にとっては発電事業に係る予見性の低下となっている。
入札は2月から5月下旬の間に行われる予定で、2019年6月から2021年6月までの間に供給を開始するベース火力電源260万kWを落札した卸電力事業者から購入することになる。契約供給期間は15年間(10年~30年の範囲で変更可能)で上限価格を9.53円/kWhとしている(※3)。入札募集の概要に火力の電源種別は指定されていないが、上記の上限価格が最も安価な石炭火力の建設費およびCO2対策コスト等をベースに設定されているため、他電源種(ガス火力および石油火力)の入札は事実上難しいと考えられている。
石炭火力は我が国の電力量の25%(2010年度)を占めている。原発の再稼働が見通せない状況では、ベース電源として経済効率性に優れる石炭火力の重要性は今後益々、高まっていくことが予想される。経済産業省および環境省は、電気事業者が現実的な電源構成を選択できるよう、エネルギーや環境に関する基本法を整えた上で、個々の発電事業の是非を議論すべきであろう。
(※1)東京電力ウェブサイト
(※2)供給予備率は需要に対する供給力の予備力(ゆとり)の比率のこと。供給力は、予想外の事故や故障、気温変動などで需要が急増した場合に備えてゆとりを持って整備される。
(※3)東京電力ウェブサイト
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