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拡大が続く米国のSRI市場、日本は伸び悩みか

政策調査部 主任研究員 伊藤 正晴

サマリー

SRI(社会的責任投資)の調査を行っている米国のUS SIF(The Forum for Sustainable and Responsible Investment)が公表した“Report on Sustainable and Responsible Investing Trends in the United States 2012”によると、米国のSRI市場の規模は2011年末で3.74兆ドルに達したと推定されている。2009年の3.07兆ドルから、22%拡大したことになる。


図表1が、US SIFが示している米国のSRI市場規模の推移である。米国のSRI市場の規模は、1995年末は6,400億ドル程度であったのが、2001年末には2.32兆ドルにまで拡大した。そして、2003年末には一旦、規模が縮小したが、その後は再び拡大を続けている。SRI市場規模をカテゴリー別にみると、株主行動(※1)は、1995年末の4,700億ドルから2011年末は1.54兆ドルへと拡大した。そして、規模が大きく拡大しているのがESG要素を考慮した投資(※2)で、1995年末は1,700億ドル程度であったのが、2011年末には3.31兆ドルへと大幅に拡大した。また、2009年末と比較すると、ESG要素を考慮した投資の市場規模は3割近く拡大しているのに対し、株主行動はほぼ横ばいとなっており、ESG要素を考慮した投資が直近のSRI市場全体の規模の拡大に寄与したようである。


US SIFは、SRIの投資主体を年金基金などの資産運用を行っている機関投資家と、ミューチュアル・ファンドなどの個人向け商品の運用を行っているマネー・マネジャー等の2つに分け、それぞれの運用資産額を集計している。2011年末での運用資産額をみると、ESG要素を考慮した投資では機関投資家が2.5兆ドル、マネー・マネジャー等が1.4兆ドルとなっている。また、株主行動は機関投資家が1.3兆ドル、マネー・マネジャー等が2,500億ドルである。各カテゴリーで重複があるため単純に比率を算出することはできないが、機関投資家による運用の占める割合が高いといえよう。

図表1.米国におけるカテゴリー別のSRI市場規模の推移
図表1.米国におけるカテゴリー別のSRI市場規模の推移

(注)2つのカテゴリーに属する運用があるため、合計は重複を除いて算出されている。
(出所)US SIF“Report on Sustainable and Responsible Investing Trends in the United States 2012”より大和総研作成

次に、図表2が日本のSRIを調査している社会的責任フォーラム(SIF-Japan)が公表している資料から作成した、1999年9月から2012年9月までの日本のSRI市場規模の推移である。米国とは異なり、日本のSRIは個人投資家が中心で、年金等の機関投資家によるSRIは限定的となっている。


2012年9月末の公募SRI投信の残高は2,121億円、社会貢献型債券は4,905億円で、これらを合計したSRI残高は7,026億円となった。「エコファンド」などのSRI投信の残高は、2007年末には1兆円を超えていたが、その後は株式市場の下落などもあって減少傾向が続いている。一方、「ワクチン債」、「マイクロファイナンス・ボンド」などの社会貢献型債券の残高はここ数年、大きく伸びており、2011年末には5,200億円に達した。その後は償還の影響などもあって若干の減少を示しているが、5,000億円程度の水準を推移している。また、SRI投信と社会貢献型債券の残高の合計は、2009年の終盤から8,000億円前後で横ばいとなっており、直近ではSRI投信残高の減少と社会貢献型債券の償還などで7,000億円程度で推移している。

図表2.日本のSRI市場規模の推移図表2.日本のSRI市場規模の推移

(出所)社会的責任フォーラム(SIF-Japan)公表資料より大和総研作成

米国と日本のSRI市場規模は、集計対象や定義等が異なるために単純に比較することはできない。そこで、US SIFが公表している個別のSRIミューチュアル・ファンド(米国の投資信託)のデータを基に各ファンドの残高を合計してみると、2012年10月末の残高合計は260億ドル程度で、2兆円を超える規模となっている。米国のSRI市場は機関投資家の比率が高く、個人投資家が中心となっている日本に比べると桁違いの規模となっているが、個人投資家向け商品である投資信託でも、10倍程度の規模の違いがあるようである。


(※1)議決権行使や株主提案、企業経営者との対話などで投資先企業に社会的責任を果たすように求める行動。エンゲージメントとも呼ばれる。
(※2)投資プロセスに、財務情報だけでなくE(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)から構成されるESG要因も加える投資。

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