2012年07月20日
サマリー
2012年7月11日、東京証券取引所グループから「ESGで企業を視る」が発表された。東証グループでは、日本経済応援プロジェクト「+YOU(プラス・ユー)~一人ひとりがニッポン経済」の一環として、財務指標だけでは見えない、魅力ある企業を紹介する活動を開始している。その第1回目として、ESGをテーマとして選定した結果が紹介された。図表1が、「ESGで企業を視る」で選定された企業で、東証1部上場企業を対象に、SRI調査会社であるグッドバンカーによるESGスコアと、ROEの高い15社が選ばれている(※1)。ESGスコアには、企業が継続的に取り組んでいる活動が反映されていると考えられることから、ESGスコアが高いことは、これら15社の過去のリターンに影響している可能性があろう。そこで、これら15社でポートフォリオを作成し、過去のリターン動向を試算した。
図表1.「ESGで企業を視る」選定企業リスト

(出所)東京証券取引所グループより大和総研作成
まず、選定された15社のリターン動向をみるために、毎月、15社に等金額投資したケース(等金額ポートフォリオ)と、前月末の時価総額に応じて投資したケース(時価総額ポートフォリオ)を作成し、リターンを試算した。図表2が、このリターンを累積した直近3年間のリターン指数の推移である。いずれの指数も、株式市場の代表的なベンチマークの1つである配当込みTOPIXと似た動きを示しているが、計測期間の後半では等金額ポートフォリオが最も高い水準、配当込みTOPIXが最も低い水準を推移し、その差が拡大していることがわかる。また、時価総額ポートフォリオはその間を推移している。
図表2.リターン指数の推移(2009年6月末=100)

(出所)東京証券取引所グループ等より大和総研作成
15社で構成したポートフォリオの直近3年間のリターン指数は、等金額投資でも時価総額に応じた投資でも配当込みTOPIXよりも高い水準を推移しており、市場全体と比べてこれら15社の平均的なリターンの高いことがわかった。しかし、これらリターン指数は毎月、リバランスを行っていることになり、投資という観点では煩雑な面もある。特に、等金額ポートフォリオは15社への投資が等金額になるよう、毎月、リバランスが必要となる。そこで、1年間、2年間、3年間のそれぞれについて、期初に投資してそのまま保有を続けた場合のリターンを算出してみた。
図表3が、それぞれの保有期間別のリターンである。いずれの保有期間でも、株式市場全体の動向を占める配当込みTOPIXのリターンはマイナスであった。これに対し、選定された15社で構成したポートフォリオのリターンは、2年間と3年間保有するとプラスになっている。
図表3.2012年6月末まで保有した場合の保有期間別リターン(年率換算値)

(出所)東京証券取引所グループ等より大和総研作成
以上のように、「ESGで企業を視る」で選定された15社でポートフォリオを作成し、そのリターンを試算すると、市場全体よりも高いことがわかった。もちろん、リターンに関係すると考えられるROEを併用していること、あくまでも過去のリターンを試算していることなどには注意が必要であるが、これらの試算結果はESGという観点が投資に有効である可能性を示唆しているのではないだろうか。選定された15社の今後のリターン動向が楽しみである。
(※1)「ESGで企業を視る」では、「東証市場第一部銘柄を対象に、TOPIX17業種毎にESGスコアの高い銘柄を、大型株と中小型株からそれぞれ抽出し、ROEが業種平均以上かつ最も高い銘柄をスクリーニングしました」と説明されている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
実運用段階に入った国連管理型カーボンクレジットの利用可能性
供給制約と利用制度の要件を踏まえたクレジット活用の視点
2026年09月04日
-
2026年3月期有報の人的資本開示②
「従業員給与等の決定方針」に何が書かれていたか
2026年08月17日
-
ボランタリー・カーボン市場(VCM)の動向と国際取引の課題
高品質クレジットの流通を支える市場・制度基盤の整備
2026年08月14日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
-
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
-
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
-
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
-
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日

